C級スポット探索日記

C級スポット探索日記

各地の資料館・博物館・珍スポを回り倒すのが趣味です。転勤族(神奈川→埼玉→長野)

扇沢総合案内センター

あの!
トロリーバスが!!
扇沢に帰ってくる!!!

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何の話か分からないって?
すまない、黒部ダム以外は帰ってもらえないか。
ここは黒部ダムの麓、扇沢だからです。

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立山町HPより 赤丸は筆者記入 http://kanko.town.tateyama.toyama.jp/spot/index.html

長野県大町市から黒部ダムを経由して富山県につながる立山黒部アルペンルート。沿線に、日本で唯一のトロリーバスが走行していることは、観光で訪れた方ならご存じなはず。というか乗ってるはず。

このトロリーバスのうち、扇沢黒部ダム区間は2018年をもって運行終了。電気バスに代わることになりました。
引退したバスの1台が、扇沢駅の隣にある総合案内センターで展示されているのです。

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(バスの車内にも入れます)

ちなみに運行終了~展示までの経緯は、どったんばったん大騒ぎだった。
当初保存を計画していた大町市だが維持コストが高くて断念、バスはみんな解体場おくり。しかし熱心なファンが工場側に処分保留を訴えて時間を稼ぐ一方、各地の博物館に引き取ってもらえないか交渉していたと。なんという鉄オタ・・ならぬバスオタ魂。

その頃、大町市の職員はトロリーなんてとっくに重機のエサになったと思っていたらしい。切替が早いっすね。

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(地味に人気なゆるキャラ おおまぴょん氏 おおまぴょんのプロフィール | 大町市公式サイト

そんな大町市もファンの熱意にほだされ、保存計画に再チャレンジ!・・でも金が無いのは変わらない。それきたクラウドファンディング
ひとまず180万円を目標に募集したところ、3日間で達成した。さすが知名度ある車両は違う。おおまぴょんを人身売買に出さなくて済みましたね。

細かい経緯は↓。

readyfor.jp

 

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車両は展示用に綺麗にされて、2020年11月からここ総合案内センターにて展示されています。2021年4月からはトロバス記念館として新装開店するそうです。

中は簡単な展示室になっていて、20分もあれば十分。バスの時間待ちでどうぞ。
トロリーバス紹介のほか、バス乗務員の制服や機材が置いてありました。

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トロリーバスは電気を動力とするバスです。頭にパンタグラフみたいな棒が付いてて、これを上空の架線に当てて電気を取る。電車と同じです。だから法的には電車扱いなんですね。「無軌条電車」と呼ばれます。
架線から離れてしまうと動けなくなります。なので万が一トロリーと戦うことになったらパンタグラフ部分をグーで殴るのが有効ですが自分も感電するので引き分けです。

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(開業当時のバス)
1964年開業以来、多くの観光客をダムに沈め運んできました。
普通のバスではなくトロリーバスにしている理由は、黒部ダムが自然豊かな中部山岳国立公園に位置しているからです。排ガスぷんぷんのバスで走るより、電動車のほうがクリーンでしょ。ただ当時はEVなんて無いので電気を使うには架線を張らなきゃダメでしたということ。

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(国内唯一となった室堂のトロリー。画像はトロリーバス - Wikipedia

そういう付帯設備が多いことと、トロリー自体が日本でここしかないから部品の調達コストが高いんでしょうね。今は電気自動車も普及しているし。
バス運行者の関西電力さんも「もう安価な電気バスで良くね」と気づいてしまったらしい。2018年の営業を持ってお役御免。
国内のトロリーバス路線は、黒部ダムをさらに登って行った先、大観峰~室堂間を残すのみとなりました。

 

ところでさっき書いたけれど、トロリーバスって法的には電車なのね。でも実態はどうみてもバスだから、バスと電車で2つの免許が必要。
バスは大型二種で良いのでその辺の教習所で(たぶん)取れる。問題は鉄道で、「無軌条電車運転免許」という。以前は大型二種さえ持っていれば、国交省に書面申請することで簡単に取得できた。

だから「免許クラスタ」、それを実際に使うかどうかに関係なく世の中のあらゆる免許を取りたくて仕方ない人々ってのがいるそうなんですが、この方々は(使う予定のない)大型二種免許を手に、国交省へ申請に行ってたそうです。役所の人も大変ねぇ。

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ゆとりーとライン。画像はゆとりーとライン - Wikipedia

しかし法令改正により現在では必ず技能研修を受けねばならなくなりました。

教習所は国交省が指定してるんですが、ネットで調べても全然でてこないのね。国交省告示に載っているらしいのだが見つからない。
この「無軌条電車運転免許」、国内で必要になるのはトロリーバスと、あと名古屋を走る“ゆとりーとライン”だけなんですよ。だからそれぞれ運行会社が自前で教習所やってると思われる。JRが運転手の教習所を社内で持っているように。


そう思って、ゆとりーとライン運行会社である名古屋ガイドウェイ(株)HPを検索したら、2017年安全報告書なる書物に「無軌条電車の運転免許試験やりました」って載っていた。なので免許クラスタ関西電力か名古屋ガイドウェイに就職することで、免許証と心の空欄を埋められますよ。やったね。

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黒部ダム建設のハイライトビデオも放映中(左)。まぁ現地でも見れますけどね。上映時間20分。
あと『黒部の太陽』の説明ですが、原作の小説ではなく2009年香取慎吾主演のフジテレビドラマ。その収録秘話が幾らか紹介されてたんですが、撮影セットはめちゃめちゃ気合入ってて、スタジオに本当にトンネル建てるレベルだったそうな。黒部ダム工事の最難関が扇沢トンネル掘ることだったのにそれを簡単にやってのけるという、史実に対する盛大な皮肉をかましてしまいました。作者の木本正次さん憤死不可避。

 

ということでした、おしまい。

 

【滞在時間】30分

【混雑度】★(誰も居ない)

【URL】なし