C級スポット探索日記

C級スポット探索日記

各地の資料館・博物館・珍スポを回り倒すのが趣味です。車が無いので公共交通機関利用で粘っております。転勤族(神奈川→埼玉→長野)

原田泰治美術館

「日本の原風景」という言葉がよく聞かれる。
そういう場所に居たり育ったりしたわけでもないのに、なにか懐かしさを憶える風景が誰しもの心に眠っている。金色の稲穂が一面に広がる里山とか、開放的だが人気少なく寂しげな漁村とか、熱湯に突き落とされる出川哲朗を思い起こすと、「あぁこういうのが日本だよなぁ(お茶ズズー)」と感傷に浸れるわけです。

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(『田植えの子供たち』1992)

原田泰治は、そうした原風景を半世紀にわたり続けている画家です。「田舎の風景描いてりゃ全員そうだろ」と思われそうですが、原田が表現する山里は丸っこさ・可愛らしさがあって、見る人を暖かく迎えてくれる。雪に埋もれた寒村の絵などもあるわけですが、過酷さよりも人々の暮らしを包みこむ穏やかさを感じさせます。

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もう一つの特徴は、登場人物に顔が無いことです。情景描写をするのに人の表情って重要な情報になると思うんですが、お構いなく全員のっぺら。手を抜くんじゃない。
ただ手足や顔の向きなどの細かい描写で人々の仕草が生き生きと表されており、顔なんて描かなくとも空気感は伝えられることに気づくのです。

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そんな原田さん、諏訪出身なので諏訪に美術館があります。
上諏訪駅から3kmあるので徒歩だとしんどい。1日6本程度という絶滅危惧種みたいな市民バスが一応ありますので、時間を合わせてどうぞ。

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本人の写真。諏訪の高校を出て東京の武蔵野美術短大に進学。優秀な成績で卒業し、銀座のスタジオに就職というキラキラキャリアでしたが「通勤が辛い」ので数か月で退職。メンタル弱すぎて親近感がわく。
諏訪に戻ってデザイン業を個人開業。イラストも手掛けるようになり、“自分が生まれ育った信州の風景”を題材にしたところファンが増え、朝日新聞に依頼された風景画連載がヒット、テレビやラジオにも出演する有名人になりましたとさ。

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信州の原風景画家なのに、髪型はなぜか60年代西海岸です。「絵を描くときに長髪が邪魔だから束ねている」とのこと。
しかしヒッピーみたいだなぁと思っていたら、親友のさだまさしは「ネイティブアメリカンの酋長」と火の玉ストレートな例えをしていた。原田の容貌から文明性を感じなかったのだろうか。

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美術館の展示室は1Fと2Fにあり、ともに企画展です。撮影は禁止。50~60点はあったので、のんびり見ていると1時間。紹介ビデオも放映中。

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エントランスに小さい車が置いてあるのは本人の愛車ですが、なんとブレーキは足ではなく手で操作します。
実は原田氏、1歳の時に小児麻痺を患って足が不自由なので歩行には杖が必須。ブレーキを踏めないので町の自動車工場に相談したところ、ハンドルを加工した手動ブレーキを作ったのだ。職人、天才過ぎないか。
原田はこの車を大事にし、50年も使い続けたそうな。50年!部品壊れたらメーカーの在庫とっくに無いと思うんですが・・まさか部品まで自作してたのだろうか。

 

そんな感じで、ほっこりした絵画に触れられる美術館でした。
おしまい

 

【滞在時間】1時間
【混雑度】★★★(ちらほら)
【URL】

www.taizi-artmuseum.jp