立山カルデラ砂防博物館
砂防が近年ニュースになったのは2018年7月西日本豪雨のとき。
各地で激しい雨が続き、最も被害を受けた広島では土砂災害500件弱・死者100人以上にのぼりました。豪雨災害としては平成最悪。
(広島県での土砂災害状況 国交省HP https://www.mlit.go.jp/river/sabo/jirei/h30dosha/H30_07gouu_gaiyou1807311800.pdf)
ただ砂防堰堤のおかげで被害を軽減できたエリアがあったようです。砂防というのは、土砂崩れが起きた際にそれを食い止めるダムの1種みたいなもので、下の左側の写真のイメージ。
これで助かった市街地もあり、推定1,000億円分の被害を免れたとか。砂防整備費用は300億円だったので、700億円分の投資効果があったってことですかね。
(右の写真は国交省HPより https://www.mlit.go.jp/river/sabo/jirei/koukajirei_jigyo.pdf)
さて、富山県もかつては土砂災害・洪水に悩まされてきましたが、現在は被災が少なくなり安全な地域として注目されているようです。上流域である立山で徹底的に砂防工事をして土砂流出を防いでいるのが理由の1つ。
我々はその秘密を探るべく、富山駅で白エビの天ぷらと地酒をしこたま飲み食いしてから、黒部ダムに行くついでにアマゾンの奥地 立山へ向かった。。。のだが富山地鉄の車両にはトイレがなく、現地までの1時間強で膀胱が全滅した(完)
立山駅から徒歩2分で着きます。砂防の展示室とカルデラ展示室があり、入館無料なんですがカルデラだけは別途400円かかる仕様。
立山黒部アルペンルートへの出発駅なのでケーブルカーの待ち時間で来館する人が多いようですが、展示の量けっこう多いので暇つぶしどころか時間が足りません。砂防だけで1時間かかり、カルデラ見れなかったんですが、なんとカルデラ展示室の方が広い模様。テキトーに飲食店に入ったらドカ盛りで有名なところにあたってしまい、無事死にかける感じに似ている。
入館したらまずは砂防の解説ビデオでも見てってくださいね。説明パネルいっぱい貼ってあるけど、こっちのほうが5億倍わかりやすいです。
砂防ダム君がはてな君に説明する形で進んでいきますが、はてな野郎は「えーそんなの意味ないじゃーん」「本当にぃ?」とクソリプを延々と飛ばし続けるので、爽やかな苛立ちと殺意を感じ取れると思います。
(© OpenStreetMap contributors)
立山連峰から日本海へそそぐこの河川は暴れ川として名高く、頻繁に被害を起していました。右の写真は1880年代の災害記録を示したものですが、洪水が毎年恒例行事になっています。住民はもう筏の上に家を建ててキナギタウン化して良いのではないか。
富山県側も政府のお抱えオランダ人技師ヨハニス・デ・レイケさんを招聘。日本各地で30年間治水事業に携わったベテランですが、常願寺川の上流を視察したところ「(急流すぎて)もはやこれ川じゃなくて滝じゃね」「今の技術じゃ無理だな」とばっさり匙を投げました。諦めが良すぎる。
なお神通川の改修計画はやってくれたので無能カステラおじさん扱いするのはやめてさしあげろ。
洪水の原因は、常願寺川の上流 立山カルデラの軟弱地盤にありそうです。
①頻繁に崩壊しては河川に土砂が流れ込んでくる
②土砂が堆積して川底が浅くなる
③ちょっと増水すると河川から水がはみ出してビッシャビシャ。
というわけで土砂流入を抑えるための砂防工事が必要と考えられました
(赤木正雄さん)
富山県が1907年から工事を始め、1919年にやっとこさ砂防ダムが完成したのですが、土石流が発生して1年足らずで壊されました。1922年に復旧できたのも束の間、同年の豪雨災害で再びおじゃん。壊されるの早すぎ。ドリフのコントか。
もうダメぽ(死語)、、ということで富山県は国に事業をぶん投げまして、やってきたのが内務省の技術官僚で砂防専門家 赤木正雄。当時は砂防に明るい人材が全然おらず、海外留学から帰国して全国の砂防現場を駆けずり回っております。
このジャガイモおじさんが立山に着任し、8年間の工事を経て1939年に白岩砂防堰堤を完成させ、暴れ川問題に終止符を打ったのです。作ったものは管理しないといけないので、博物館のすぐ横にある国交省の立山砂防事務所が業務を担っています。
赤木さんの功績は15分くらいのビデオで放送されているので時間があればどうぞ。
大きな列車が置いてあるのですが、砂防工事で使っている運搬用トロッコです。険しい山道に線路を敷いて、現場まで資材を運んでいくんですね。工事当時から今日まで80年以上も使われており、世界に類を見ない鉄道になっています。
勾配がめちゃめちゃキツいので箱根登山鉄道みたいにスイッチバックして登っていくわけですが、その数38回と凄まじいことになってます(箱根は3回)
路線図がこれですが、列車の線路とは思えませんね。小腸かな?
(国交省 立山砂防事務所HP https://www.hrr.mlit.go.jp/tateyama/truck/index.html)
このトロッコ、立山砂防事務所の見学会で乗車できるのです。世界にも珍しい路線なので人気が高く、事前応募をして抽選に当たらないといけない。倍率は4倍だそうな。
また運行当日の天候次第でキャンセルされることも。山の天気は変わりやすいので、せっかく当選して遠方からはるばる来ても直前の土砂降りでパーになる恐れがあります。運ゲーすぎる。
というわけで強運の持ち主は挑戦してみてください。
おしまい
【滞在時間】90分
【混雑度】★★★(ちらほら)
【URL】立山カルデラ砂防博物館