塩尻短歌館
緊急事態宣言が明けたので、塩尻市の広丘にある短歌館に行きました。
JR中央線の広丘駅から徒歩10分、入館料300円。
明治以降、正岡子規とか高浜虚子らを中心に和歌・俳句が近代文学として興隆した頃、この広丘にも文人が集まってちょっとした短歌軍団を結成していたようです。
(画像は塩尻短歌館HPより)
その短歌会のメンバーがこちら。あと何人かいるんですけど尺の都合で割愛です。
町内会の会員名簿じゃありません。皆さんれっきとした歌人です。
ここ広丘の出身である太田水穂(左上)を中心に、日本史の授業にも登場する短歌雑誌『アララギ』刊行に携わった島木赤彦(中央 上)。全国を旅し続けて各地に歌碑を残しまくり、最期は酒の飲み過ぎによる肝硬変で若死にした若山牧水(左下)。
彼らの家族や門下生もあわせると十数人にはなります。その作品や遺品を中心に展示しているのです。
館内では、まずは館員さんの案内で一通り展示を見学し、そのあと自由観覧って流れでした。
建物は明治時代に造られた民家。落ち着いた和室がありますねぇ、、と思ったら、この和室部分は最近改装して作ったらしい。まぁ雰囲気あってるからいいんでない(小並)
展示ですが、さきほどの歌人たちは掛け軸や色紙に作品を記しているので、その現物が並んでおります。原稿も残っています。常設展で30点、企画展はその時次第。
・・和歌とか俳句って、読み慣れていない人間が見るとけっこう時間かかるんですよね。1つ1つ確実に見て行くと、全部で40~50分くらいは掛かります。
館内の写真は自由に撮影OKです。気になった作品をご紹介。
1つ目は若山牧水。この人の何がすごいって、とんでもない酒豪だというところ。wikiによると1日1升は飲んでいたらしい。ザルか。旅ガラスで日本各地を回っては行く先々で歌を詠んだとのこと。地酒も飲んでいたのでしょう。
そのせいで43歳で肝硬変で死んでいる。そりゃそうだ。その酒量ならむしろ長生きな方と言えるのではないか。
風来坊な人生ですので、文字も堅苦しくなく丸文字気味になっています。JKかな?かわいい(相手は40代男性)。
館員さんによれば「牧水の筆跡は見る人が見れば一瞬で分かる」。文字からしてウソが吐けない、はっきりしてますね。
次は吉江 孤雁(こがん)の作品。フランス帰りで早稲田に仏文学部を新設した人。
そのためか、なんだか西洋チックな歌になっております。「伝説の美女を背に載せて 先史時代の王者を征服する蝸牛」。
他の歌人は「あけぼのの~」とか「ふるさとの~」とか自然・牧歌的な情景を扱っているのに、この人だけ全身に鋼鉄の鎧をまとって薔薇戦争でも始めそうな雰囲気であります。
あとは太田 青丘(せいきゅう)の作品。
「法然房 親鸞 道元も苦しみし世にして 君に歌ありしこと」。
過去の偉人達も苦しんできた辛いこの世界で、でも君と僕には歌がある。これなんてRAD WIMPS?まさか明治時代にセカイ系があるとは思いませんでした。まぁタイトルが「実朝公」なのでたぶん違うと思います。
そんな展示物の他に、手に取って見られる短歌集もあります。さきほどの和室でのんびり読むことも出来ます。
しかしこれ全部、短歌の雑誌らしいです。みんな最新号。こんなに種類あるんですね。『アララギ』はもう無いようですが、広丘短歌軍団の長 太田水穂が1915年に創刊した『潮音』は継続中です。
最後に短歌館のアンケートを書いてって欲しいと館員さんに頼まれたのですが、よく見ると「感想(または短歌)をお書きください」とのこと。ハードルが高すぎる!
おしまい
【滞在時間】40分
【混雑度】★(他にいない)
【URL】塩尻短歌館/塩尻市公式ホームページ