C級スポット探索日記

C級スポット探索日記

各地の資料館・博物館・珍スポを回り倒すのが趣味です。転勤族(神奈川→埼玉→長野)

貞享義民記念館

 信州は江戸時代で最も一揆の多かった地方と言われているらしい。物言う百姓たち。

言っても言わなくても侍たちに虐待されるのだから、たまには一揆くらいしたっていいじゃない。

そんな信州でも最大規模の騒動である「貞享騒動」について扱っているのが、こちらの資料館です。大糸線中萱駅から徒歩10分ちょっと。入館料は300円なり。

 入館すると、まずは館員さんによってシアターに通されます。貞享騒動について、ムービーで概要を見ましょう。

資料館訪問前に知識を持っている人は野生のライチョウ並みに希少だと思われるので、ここでしっかり学習である。

 このムービーかなり本格的で、自動仕掛けの人形や小道具が舞台に出現したり、照明が色んなパターンあって妙に緊張感を持たせてくる。ほら、松本城が燃えてますよ(実際の騒動では燃えていません。イメージです)

 

騒動が起こったのは1686年のこと。

年貢は江戸幕府公式ルールだと5公5民であるところ、松本藩主が7公3民というボッタくり価格に引き上げたので、生命の危機を感じたここ中萱の百姓たちが「お慈悲を~」と請願したのが始まり。 

それに刺激されて近隣の百姓も立ち上がり、巨大な群衆となって松本城周辺に押し寄せたのだ。その数1万人とも言われるが、デモ主催者発表の数字は過大すぎるのが中国では常識なので、1000人くらいだったかもしれない。とにかくいっぱい、いっぱいです(適当) 

 展示室です。レッドカーペットでおしゃれな雰囲気を出しているけれど冷房は効いていないので夏場は時間との戦いである。

 

この松本藩の藩主は水野家といい徳川家康の従弟の血筋にあたるのだけれど、まぁボンクラぞろいだ。

2代目の忠職は、幕府の軍役や日光護衛で支出が増大していたにも関わらず、寺院や御殿を建てるなど更なる浪費をしたので財政は火の車。

3代目忠直も同様に寺の造営・日常的な豪遊など散財しまくり、そこに飢饉も重なったので火の車どころか火山になってしまった。

そこへきての年貢税率爆上げは、誰しも「ざわっざわっ」である。 

(リーダー多田加助の持っていた刀。これで侍を斬りつけたわけではありません) 

 百姓のリーダーは多田加助という人物。苗字ついてるし、本人の持っていた刀まで展示されており、なかなか身分の高い郷士といえる。

彼らは「年貢を7公3民から、(幕府公式ルールの)5公5民まで下げろ」と訴え。

大量の農民が押し寄せてきたのを見て、松本藩側は慌てふためき、「とりあえず6公4民で」という回答を出した。

 

これで多くの農民が納得してしまいお家へ帰ったのだが、加助ら一行は「5公5民でないと筋が通らない」としてデモ活動を続行。

別に松本空港とか天安門広場を占拠してないけど、藩もイヤになったのか「要求を認める」と答え、加助らは喜んで撤退し地元に戻ったのでしたとさ。

しかしこれは罠だったのだ(じゃーんじゃーん(伏兵が出てくるときの音))

(加助らが眠る「義民塚」の写真。死んでしまったがな)

 1か月後、加助らの村に藩の役人が突如現れて、リーダー格たちを捕縛していった。

「5公5民にする」というのは彼らを城下から追い払うための嘘で、地元に戻って油断しているところを一網打尽にする計画。松本藩きたない。失望しました、高遠藩のファンになります。

そして加助ら28名は処刑されてしまいましたとさ。ちゃんちゃん(完)あれ、いつ一揆のバトルシーンが来るのかと思っていたのに、終わっちゃったよ。

 いえ、まだまだ加助たちの夏は終わりません。

そのあとの松本藩だが、加助を処刑させた3代目は長生きしたものの、4代目と5代目が若くして死去し、6代目に至ってはウルトラバカで放蕩の限りを尽くした挙句に江戸城で抜刀して現行犯逮捕となり、所領没収。

地元では「加助様の呪いじゃあ!」と大盛り上がりになり、神格化されて仏像が作られたり・・

 阿弥陀様みたいな姿になって掛け軸に書かれたりしましたとさ。

松本では加助の掛け軸を飾る習慣が昭和期まであり、もしかしたら現在でも行われているかもしれないが、地域振興の一端を担うまでに至った模様。

 それどころか加助、銀幕デビューまでしてるぞ。戦前、騒動を題材に映画ができたのだ。すごいなあ、騒動って起こしてみるもんやね(違う)

なお肝心の映画フィルムはどこかに行ってしまって、今では見られないようです。

 さらには演歌にまでなってしまった。媒体はCDどころかカセットテープのようです。

ついには紅白にまででるのか、加助。次はハリウッドかボリウッドだな。

 この騒動に参加した村としていない村の一覧があって笑ってしまった。参加していない村、つるし上げられてるじゃないか!

オレンジが参加した村です。青は政府の犬です。

 そんな感じの加助ワールドでしたが、どう見たって関係なさそうなグルグルが天井ぶち抜いていて、展示よりもこちらの方が気になって仕方ありません。

「義勇貫天」という言葉から来ていて、加助の義は天をも貫くみたいなノリかと思われます。加助は神様仏様だからね、天井を抜くくらいわけないんですよ。

 展示室おしまいです。

庭があっていい感じに日影が出来ているので、風が吹くと涼しいのだ。

 湧き水でしょうか。良いですねぇ。

 飲み水ではないようですが、「飲みたきゃ自己責任で飲め」と飲用を禁止していないところが不思議ですね。

私は一度こういう系の水をのんで、1週間胃腸炎で死にかけたことがあるので止めておきます。

 

おしまい

 

【交通手段】中萱駅から徒歩10分

【入館料】300円

【混雑度】★(誰もいない)

【滞在時間】40分

【URL】

www.city.azumino.nagano.jp