林原美術館
(株)林原の3代目社長である林原一郎(1908-1961)が集めた美術品や、岡山藩主である池田家に伝わる品々を飾っております。
池田家は維新後に金欠になっていたので、その際に所有していたお宝を片っ端から売り払って、それが林原家にやってきたのかもしれない。
この土地は、岡山城の二の丸が存在したところ。
維新後に、岡山藩の支藩である生坂藩であまっていた武家屋敷を移築しており、この門はその屋敷の一部。
岡山城周辺は戦時中の空襲で大被害を受け、武家屋敷も殆ど焼失してしまったが、奇跡的にこの門は生存したため、ありがたーい逸品となっている。
門をくぐって、美術館の建物へ。
右手方面にちょろっと見える白い建物も、武家屋敷の一部として移築されてきた蔵である。
門の他に空襲被害を免れたのはこの蔵だけだが、一般公開はされていない。
さて、林原美術館には常設展は無く、企画展オンリー。
このときは「お守り刀展覧会」。
刀剣には邪鬼を祓う力があると信じられており、新生児のために刀を備えて、健やかな成長を願うというのが、お守り刀なんだと。
この「お守り刀展覧会」は、岡山県発祥の、刀のコンテストである。
現代の刀鍛冶らが、お守り刀を製作して応募するもの。
毎年開催しているようで、今回は林原美術館が主催となった様子。
このときは館内撮影可能だった。
美術品なんて普通は撮影禁止だと思うけど、太っ腹ですねぇ。
入場料800円払った甲斐がありましたな。
通常は500円らしいけど。
林原一郎氏は刀剣蒐集が趣味の一つであり、この美術館にも多くの刀剣が保管されているそうなので、その関係でこの展覧会をやっているようである。
この作品は、特賞である文部科学大臣賞を受賞した。
あれ、けっこう偉い人出てくるんだね。
しかし刀剣に関する知識を私は持っていないので、語ることが何も無いのだ、残念だったな!
きっとウネウネ波打ってる部分(刃文)とか、刃に刻まれている彫刻とか、地鉄(黒っぽいところ、たぶん)に浮いて出ている紋様とかを鹿爪らしく眺めて、うーむとか言っていれば良いのだと思う。
茎(なかご、と言うらしい)には職人のサインもとい銘が刻まれている。
こちらが2番目の作品。
ふむ、さっきのと違いが分からんな(鑑賞力無能)
つづいて、こちら。
なんか刃文がとんでもないことになっている。
これだけハッキリしていると、さすがに分かるな。
スラっとした正統派っぽい作品。
刀身に彫られている溝っぽいものは「棒樋(ぼうひ)」と言い、南北朝時代以降に流行りだした装飾らしい。
アクセントになっていて格好良い。
ちょっと変わった一品。
左右で色合いがハッキリわかれている。
個人的にはかなりお気に入りなのだが、コンテストでは佳作であり、入選作品ではなかった。
専門家はどの辺を見ているのか、気になるところ。
お守り刀ということで七五三とかお祝いごとっぽい写真があちらこちらに貼ってあった。
ただし何故か、モデルは全部女性であった。
まぁ刀でお守りしたいのは女性であり、野郎は勝手にしろということだろう。
割と大々的に展示されているこの刀は、駐日ポーランド大使賞を受賞した。
どうしたんだポーランド、日本刀に興味があるのか。
ロシアに攻め込まれないよう、彼らもお守り刀が欲しいのかもしれない。
その刀を切っ先側から見た図。
薄すぎる。
薄すぎて、どこに刀があるのか分からない。
岡山は古代から鉄の産地であるため、刀の材料である鋼を産出することができた。
平安時代には既に多くの刀鍛冶がいたとされている。
とくに長船という場所(いまの瀬戸内市)は交通の便が良いこともあって刀づくりの中心地となり、備前長船の刀は名品として知られた。
刀だけでなくて、拵え(こしらえ)も登場します。
拵えとは刀を納める道具全体を指しており、そのうち刀身を納めるのが鞘、持つところを納めるのが柄、という解釈でおります。
短刀用の拵え。
ゴールドで葵の紋を装飾する、豪壮な作品である。
次にこちらの短刀。
黒漆で塗った鞘には、銀で雁の絵が描かれている。
中国の故事で、前漢の武将が敵に捕まった時に投降せず、雁の足に手紙を括り付けて味方に送り、それで助かったというものがある。
それで雁=忠節を尽くす意味となり、武士に好まれるネタになったんだとか。
一方で柄の方には良く分からん生き物が描かれていますが。
ネッシー?
赤ver。
こちらは朱色の漆に、鳳凰と唐草模様を金で蒔絵している。
柄に居るのもたぶん鳳凰。
でもこちらは炎タイプではなさそうである。
拵えの作り方が展示されていたので、見てみよう。
まず木材を選んでおります。
木材に、刀の頭身を下書きしました。
鉋で削っております。
型を取れたら、バキッと2つに折ります。
2個=1セット作りました。
刀が収まるよう、木材の内側を削ります。
削ってますねぇ。
拵えの原型が出来上がりました。
なお切っ先の先端には、塵や油がそこに流れるようポケットを作っております。
そして木材をくっ付けるわけだが、その糊には飯粒を練ったものを使用する。
ここにきて昨日の晩飯の再利用。
それを大名や将軍が使っていたとは、感慨深いですねぇ。
あとは関係する部品を作ったり、
返り角とかいう部分を設置したり。
この部分で拵えを帯に括り付けて、ずり落ちないようにするんだと。
こんな小さい仕掛けで、機能するんだろうか。
完成しました、おめでとう。
あと拵えをいくつか見て終わりにしましょうかね。
赤黒の鞘、かっちょいい。
奇抜なまでのピンクさ。
梅の花をあしらったらしい。
女性的な感じもするが、お侍さんはどう評価するか聞きたい。
最後にこちら。
鍔がドラゴンになっている。
柄の末端も、しっかり尻尾。
そして龍の口から炎を吐いたような、鞘の装飾。
RPGでありそうな装備だな。
展示室おしまい。
休憩所にはタッチパネルがあって、展示品もろもろをここでも確認できるよ。
拡大も出来るので、ケース越しに作品を眺めなければならない展示室よりも、こっちの方が見やすい可能性が微レ存。
そんなわけで社会貢献してます感バリバリの林原美術館であるが、大元である(株)林原は2011年に破産しており(会社更生法適用)、19世紀創業の歴史も空しく、現在は別企業の完全子会社に成り下がってしまった。
破産の際に林原美術館の所蔵品も幾らか売りに出したと考えられている。
というわけで地元民は企画展に足しげく通い、見れるものは見れるうちに見ておこう(不要な煽り)
以上。
【交通手段】電停「県庁通り」から徒歩10分
【入館料】500円(ただし企画展によりけり)
【滞在時間】60分
【混雑度】★★★(ちらほら)
【URL】
www.hayashibara-museumofart.jp