輪島塗会館
輪島の伝統工芸と言えば輪島塗。なので輪島にはその資料館がいくつかあり、その1つです。
1Fはショップになっており、そこで入場料を支払って2Fの資料館に入ります。300円。
展示室は2つあり、片方では輪島塗の工程の説明。写真OK。もう1部屋では江戸時代の骨董品を扱っているので撮影不可です。伝統工芸という風格を漂わせるに相応しい、気品のある内装。こっちがおどおどする位である(庶民)。
輪島塗は室町時代には生産が始められた漆器で、江戸時代になると全国に名が知れ渡ったそうです。
製作工程は、器を彫る・塗る・装飾を施すなど多段階になっており、それぞれに専門職人がいます。完成するのに半年~数年も掛かるそうな。
それらを束ねるのがプロデューサー役の塗師屋(ぬしや)。この人が全国を営業して回り、各地で様々な文化情報を得てくるので、顧客先では「輪島様」と呼ばれ知識人として厚遇されていましたと。職人たちもそういう扱いに応えられるよう、日ごろから文化素養の研鑽に励んでいました。
なので輪島塗はただの漆器ではなく、人々の教養レベルを底上げする重要な役割があったのだとさ。基礎教養があって、地域文化も発展するのでしょうね。高級感あふれる展示室はその誇りを示しているのかもしれませんねぇ。
(https://www.wajimanuri.jp/ca/shiruwanより)
そんな熟練の職人たちの手で作られる輪島漆器なわけですから、値段も当然高いわけですよね(白目)。ちょっとした茶碗だけでも2万円ですよ、たまげたなぁ。食事セット1式そろえるだけで数か月分の食費になりそうである。
こりゃ無印の食器でいいやってなっちゃいますわ。伝統工芸の素晴らしさを誇れば誇るほど、庶民の手から離れていくのは皮肉な感じ。税金つっこんで保護するか、製作過程を雑にして価格下げるかになっちゃいますね。悲しいなぁ。
おしまい
【滞在時間】30分
【混雑度】★★(他に数人)
【URL】輪島塗資料展示室 輪島漆器商工業協同組合
永井豪記念館
『マジンガーZ』『キューティーハニー』の作者 永井豪が輪島出身なので、記念館があるのです。
輪島の商店街、朝市をやっている真っただ中にあるので、休日の午前中に行くと魚介類を売る露店に囲まれて磯の香りが漂っております。美味しそうだけれど観光地価格なので、あんまり安くないってのがネックですね(小並)
入館料は520円。この入口エリアは撮影可能になっています。
中央に陣取るのは巨大なマジンガーZくん。すでにデカいですが、本物はこれの9倍あるそうです。身長10mということになりますが、ウルトラマンは40mなので戦ったらたぶん負けます。
この部屋の奥にもう1つ展示室がありまして、そこでは各作品の原画・キャラのプラモデル・マジンガーZの大きな模型がまたあります(写真は不可)。
さらに建物の入口にも居たんですよね、マジンガーZくん。合計3体で営業活動。
頭を叩くと水木一郎が「ゼェェェットォォォ!!」と絶叫する、なんてギミックはありませんでした。残念。実装したら子供のおもちゃにされて朝市の平穏が乱されること間違いなし。
他の作品は模型にしないのかと思ったのですが、作品群をみて「あっ(察し)」となりました。漫画博物館のはずが、熱海の秘宝館みたいな扱いになってしまう。
永井豪の作品がすべて電子書籍で収録されているタブレットが館内にあったので幾つか見たのですが、まぁ登場キャラが脱ぐわ脱ぐわ。キューティーハニーもお色気シーンがバンバンありまして、これで少年期に性癖が定められてしまった紳士が多数いることは想像に難くありません。アニメではモザイクでも掛けているのだろうか。
これもキューティーハニーのスピンオフ?的な作品らしいですが、もうタイトルの時点でまずいですよ!
シリーズ連載は70年代~90年代なので、昭和のお色気ギャグの雰囲気が色濃いんでしょうね。志村けんのバカ殿だって、地上波で女性の胸部を流しまくっていたわけだし。そういう時代だったのです(議論を終わらせる)
永井豪本人の写真も展示されていましたが、、あぁもうこいつはダメだ(確信)。
フランス政府から芸術文化勲章を贈られているそうです。村上隆の作品展をベルサイユ宮殿で行うようなお国ですから、きっとアートの定義が寛大なのでしょう。
お色気おバカ作品だけでなく、シリアスなものもあります。映画の評判が抜群なデビルマンが有名ですね。聞いた話だと、原作では終盤でヒロインが首ちょんぱされるというPTSD発症案件があるらしい。こわいけれど興味深い。
あとこれはキューティーハニーとかでも当てはまるのですが、わりと人体や首がばっさり斬られる暴力描写があって驚きました(グロというほどではない)。変に読者に配慮するでなく、率直な表現がされていた時代なんですかね。まぁお色気シーンは読者サービスなのかもしれんが。
展示室×2で、そこまで時間の掛からない施設でした。
おしまい
【滞在時間】30分
【混雑度】★★(他に数人)
【URL】
輪島キリコ会館
能登半島では「キリコ」という巨大な山車を担ぐ夏祭りがあり、それを紹介する資料館です。大きいものだと重さ2トン、100人がかりで担ぐらしい。30台ほど並んでいて、その光景は圧巻です。
キリコ会館は輪島駅(バスターミナル)から徒歩20分。海岸近くのマリンタウンにあり、すぐ横は日本海です。入館料630円。
もともと別の場所にあった施設を2015年に移転してきましたが、その元の施設はミシュランガイド日本版に載るほどだったそうな。あれ、移転後は外されてしまったんですか。
しかし展示室はいってすぐ、大きなキリコがどかどか並んでいるのが目に入るので結構おどろきます。そもそも「キリコ会館って切子細工ならべてるの?」程度の脳みそで入館したのでなおさらです。
7月~9月にかけて能登の各地でこれらを担ぐ祭りが開催されますが、その数はなんと180か所以上!祭りすぎである。
発祥は江戸時代の終期で、この頃のキリコはあまり大きくなかったそうですが、そのあと各町が競い合うようにしてサイズを上げ始めたため、あんな巨大になってしまったらしい。日本の祭りにありがちな「物理力以外は何も考えない」を正しく踏襲しています。
高さ12m(マンション4F)に達するものまで作ったそうですが、大正時代になって電気が普及すると、町中に張られた電線に引っかかってしまい、やむなくサイズ縮小となりました。それでもあのサイズ。
キリコの表側には文字が、裏側には絵が描かれております。こんな巨大な画布によう描けたもんですね。ミケランジェロとかでも嫌がるのではないか。
さっきの絵の人物、股間の辺りにもう一つ顔が描かれてます。アップしてみると・・うーんこれは卑猥。神様の加護を願って祭りをやっているはずが、逆に天罰でも食らいそうである。
祭りの模様は映像でみることができます。・・あれ、やたら刺激的な映像が流れていますね。巨大な松明に火をともして、爆ぜまくる火花の中で男衆が踊り狂っております。さらには松明を引きずり倒し、あたり一面が火の海に!これはもはや暴動ではないか。
そして最上階にきました。展望室になっていて日本海が眺められます。
展示室をぶち抜いているのは、さきほど燃やされていた巨大松明くんで、1Fからこの3Fまで伸びてきているのです。「物理と火力に面白さは比例する」ハリウッド映画の伝統をここでも見ることが出来ました(すっとぼけ)
フロアの壁には祭りの宣伝チラシがずらーっと。観光業界的にも集客力のあるイベントなわけですが、コロナのせいで片っ端から「今年は中止」のシールが貼られておりました。悲しいなぁ。
おしまい
【滞在時間】40分
【混雑度】★★(他に数人)
【URL】
観光列車 のと里山里海号
石川県の能登半島を走る「のと鉄道」が観光列車を走らせているので、ほいほい乗ってきました。
七尾駅~穴水駅の約1時間。通常の乗車賃に+500円で快適な列車を楽しめるのです。能登半島への旅行をちょっとリッチにしてくれます。
(のと鉄道七尾線 - Wikipedia の画像を加筆修正。)
この列車に乗るには、まず金沢駅からJR七尾線で七尾駅へ。1時間半もかかります。能登半島の意外な広さを思い知らされる。
疲れたくない方のために特急「能登かがり火」号が走っております。所要時間は1時間に短縮。自由席は860円です。
七尾駅から里山里海号に乗るわけですが、そもそも事前予約が必要なので注意。
HPで時刻表を確認して予約の電話をしましょう。ネット予約も以前は出来たみたいだけれどコロナの関係か、電話オンリーになっております(記事掲載時点)
お弁当付きプラン・お菓子付きプランもありますが値が張るので、私は駅弁を買って持ち込みました。
七尾駅前にはあまり観光ショップは無さそうなので、金沢駅で買っておくと良いと思います。駅構内に地酒屋もあるし(最重要)。車内でも飲物販売はありましたが、普通のソフトドリンクとビールぐらいだったかな。
それでは乗車します。車両の外観もですが、日本海をモチーフにした青々なシートに大きな窓で開放感。ボックス席・窓に向いたカウンター席があり、予約時にどちらが良いか聞かれますので選びましょう。進行方向むかって右側に海が来る線路になっているので、窓や座席は海が見えるように配置されているのです。
予約した座席に着くと、乗車記念品が入った手提げ袋を発見。中には限定クリアファイルと絵ハガキが入っていました。うれしいですねぇ。
列車が走り出すとアテンダントさんが回ってくるので、この列車の指定券500円+乗車券を支払います。
車窓はしばらく田園風景。雄大な農地が広がっていて、車名の「里山」感満載です。これだけでお酒が飲めそうです。寝落ちしないように気を付けよう(戒め)
20分ほどで能登中島駅に到着。列車行き違いのため、10分ほど停車します。この時間を利用して駅構内を散策します。
メインスポットは、1950年代~80年代まで稼働していた郵政省の郵便車「オユ10ー2565」。文字通り、郵便物の運搬をしていた車両です。
車内の様子。走行中に郵便物を仕分けし、目的の駅で積み下ろしていたそうな。当時の光景を再現してハガキやら荷物やらが並んでおります。
全盛期は70台ほどあったのが殆ど廃車されてしまい、奇跡的に生存していたものをここに持ってきて保存しているのです。東京~北海道の間で運行していましたが、おそらく道路網の整備&輸送トラックの台頭により鉄道輸送の需要が下がり、廃止になったものかと。
車内には郵便ポストがありまして、これにハガキを投函するとスペシャル消印がついて送られてくるそうです。
ホームには売店もありまして、軽食やアイスにお土産など置いています。「北陸とらいあんぐる」という漫画?のキャラグッズも置いてました。鉄オタとアニオタを同時発症している人はやることが多すぎて停車時間10分では足りないでしょうね。光の速さで動きましょう。
ここのカップアイスは結構おいしいのでおススメ。
再び出発すると、とうとう日本海が見えてきました。ビューポイントが3か所あり、その地点では走行速度を落としてくれるのでシャッターチャンス。
海上にはブイがいろいろ浮いていますが、牡蠣の養殖とのこと。私は初耳でしたが、能登の牡蠣は質がかなり良いそうです。
出発から1時間ほどが経過し、お酒がまわってぐでんぐでんになってきた頃、終点の穴水駅が近づいてきます。
トンネルに入ると車内の電気が消えてしまいました。なんだ、故障か?それとも酔いで視覚神経がいかれてしまったのだろうか。
すると青い光線が次々と車内を照らし始めました。なんとイルミネーションをトンネル内に設置しているのです。写真だと映画『2001年宇宙の旅』終盤の謎光線ゾーンみたいに見えてしまって不本意ですが、イルカさんが居たりと可愛らしいイルミでした。
そして終点の穴水駅についておしまいです。
観光列車は数百円の課金で旅が一気に快適になるのが良いですね。能登に行かれる際は検討してどうぞ。
根津記念館
東武をはじめ24社もの鉄道会社の経営にかかわった根津財閥の主は山梨市出身。昭和初期に建てられた邸宅が保存され、庭園や蔵、展示室があります。
中央線の春日居町駅から徒歩20分。入館料は300円です。
(初代 根津嘉一郎)
根津家は息子も嘉一郎を名乗っているのでややこしいですが、ここで扱うのは初代の人です。
10代の時、江戸遊学を親に志願するも断られたので家から脱走して上京(2年後に居場所がバレて連れ戻される)。
30代で村会議員、村長に就任。政治家キャリアを積み上げるかと思いきや、株式投資家へのまさかの転向。イケハヤ大学にでも感化されたのかな?
購入したのは電力会社の株でしたが、どんどん買い進めていくうちに経営権まで握ってしまいました。買い過ぎです。経営陣を刷新して自らも役員に就任。ここでの手腕が買われて東武鉄道をふくむ鉄道会社にも呼ばれるようになり、鉄道王への道が始まります。
(根津家にあった蔵を再現した常設展示室)
そんな根津っちの半生を説明するのがこちらの展示室。経営者としての実績だけでなく、慈善事業にも興味を持ち、山梨県内の小学校にかたっぱしから(当時高価な)ピアノを寄贈しまくったこと。
美術品の鑑識眼に優れ、専門家が贋作と言い切った作品をあえて購入し、あとで本物と判明したことなど、様々な面を知ることができます。
7,000点ものコレクションを所有していたそうですが、「子供には相続させんわ」と言い切って死去したので、それで建てたのが南青山の根津美術館だったりします。
展示室は撮影禁止でしたが、主屋はOKです。1930年代に建築され、国の文化財。
根津さん本人は東京で多忙の身なので、甥の啓吉さんが建てました。山梨の家を仕切っていたのはこの甥だったようです。
中身は大規模な和風建築。2Fにも上がれます。根津家から寄付を受けて再整備し、開館したのが2008年なので、内装は綺麗にされています。
建築に当たっては根津嘉一郎氏も指示を出しており、「大谷石を使うと見栄えが良くなるから送るよ」 → 車1台分ドカッと届いた。そんな金銭感覚の違いを見せつけるエピソードも残されております。
中庭の風景です。
なお1930年代に建てられたにもかかわらず現代的な仕様になっていて、たとえば屋内消火栓が導入されている、電気配線が埋め込み型、コンクリート布基礎など。
確かに先進的ではあるのだが実用的な話すぎて建築マニアだけが感動しそうである。
東武鉄道の社長時代に使用していた机と椅子。背後の丸窓から光がさしていて「王の玉座」感がハンパないです。
展示室では触れられてませんが、鉄道”王”というだけあって、ねづっちは相当好戦的な性格をしていたようです。
東京電灯という電力会社に居たとき、財閥系銀行から来た役員達が幅を利かせていたので「雇われ役員が何を言うか」と一喝。怒った役員達を株主総会の場でボコボコに論破してしまい、みんな役職を投げてしまいました。あのー銀行からの融資がー。
主屋に隣接する形で建っているのは「青山荘」。根津氏が山梨に帰郷した際は、来客をこの建物で迎えていたそうです。当時の建物は残っておらず、建築図面を見て再現しました。なのでかなり新しめな内装。
レンタルできるそうなので、談合や株価操作の打ち合わせなど、金の匂いがする会合に良いかと思います。
最後に庭園です。富士山を借景に、市内を流れる笛吹川をイメージした水流を配置(写真に写ってませんが)。
左の画像の松の木は、別荘があった大磯からわざわざ連れてきました。
たいへん雰囲気が良く、眺めながらお茶でもしたい感じですが、この日はすさまじい猛暑のため身体が溶けかけていましたので、これでおしまいです。
【滞在時間】60分
【混雑度】★★(他に数人)
【URL】※ 記念館HPと山梨市HPの2つあるんですが、前者は2017年で更新が止まっており、山梨市の方が最新です。
www.city.yamanashi.yamanashi.jp