松本市四賀化石館
1500万年前の松本は海の底でした。まぁ日本の半分くらい沈んでたそうですが、この四賀という地域ではクジラ類の化石が多く見つかっており、新種も発見されています。というわけで大規模な化石を展示しております。
そんな四賀地域は松本の北東部、山間部の集落です。松本駅のある市街地からは車で30分。バスもありますが平日6本・休日は3本と、かなりの情熱がないとアクセスが難しい設定です。路線バス狂の化石狂でもない限り、車で来た方が無難である。
入館料は310円です。
まずは冒頭の化石展示室を見学します。お目見えしたのは「マッコウクジラ」くんの化石。1988年に小学生の山田君が化石の一部を発見し、現地調査したところ全身骨格が出てきたのだ。世界で2例目という大変貴重なものだそうな。
新種だったので「シガマッコウクジラ」と名付けられました。あれ、フタバスズキリュウみたいに発掘した人の名前を付けてあげないの?「山田マッコウクジラ」「マッコウクジラ 山ちゃん」。手羽先売ってそう。
新種のカワハギも発見されたそうです。これは京都大学生の宮崎さんが掘り当てました。おでこの出っ張り(背鰭棘)が新種の証だそうです。
これも「ミヤザキカワハギ」ではなく「シガウスバハギ」と命名されている。四賀の皆さんはよほど地域愛が強いんですね。四賀!四賀!佐賀!
なお空中に浮いている彼はミンククジラです。化石ではなく、1990年の南極海の調査捕鯨で捕まったのをぶら下げているのです。
四賀ではクジラやイルカの化石が他にも多く見つかっているそうですが、まぁ化石だけだと絵がさみしいので、イメージとしてお楽しみください。
面白化石は他にもあります。これは「生痕化石」。うにょうにょしていて気味が悪いですが、古代の昆虫が這いずり回った跡らしい。排泄物も残されています。うげー。
この横長の化石は「陰茎骨」。・・・内容は文字の通り。すごく、、大きいです。
セイウチや大型動物のものだと考えられています。長さはなんと43㎝。世界最大級の大きさだそうです。しかも、1/3が欠損しているらしい。ハンデを与えてもこのラージサイズ!セイウチを利用した商品開発にむけて、あかひげ薬局がアップを始めました。
そんな楽しい化石群を見終えたら2Fの展示室へ。よく見ると階段で、世界の大理石展を行っております。気づかなくて最初の2段ほど思いっきり踏んづけてしまった。
岩石や地質的な展示も幾らかありました。
そして2Fの展示室ですが、、これまた肉体感にあふれた化石たちですね。新生代の地層から発掘されたのかな?
彼らは、養老乃瀧の創始者 木下藤吉郎の剥製コレクションです。養老乃瀧って松本市で創業したんですね。意外。
その創始者が四賀の山中に「信州ゴールデンキャッスル」というバブル臭全開のお城を作り、世界各地で収集した美術品を展示していました。そのコレクションの一部を化石館に寄贈したそうです。あれ、ゴールデンキャッスルはどうなったのかな(すっとぼけ)
大型動物の剥製が多く、迫力あるポーズを取っています。フォトスポットとしては化石よりも面白いかもしれない(施設意義の全否定)。
松本は観光客多いのだから、こんな山の中に置いておくより、もっと人の来る施設に置いた方がよいのではないか。松本城の天守閣で侍の横に並ばせるとか(雰囲気台無し)。
そんな見事な剥製を見終わって部屋の外に出ると、フリーフォール並みの見劣りがするパンダくんがいました。工芸品とのことですが、、あの剥製軍団に勝てるとでも思ったの?
おしまい
【滞在時間】45分
【混雑度】★(だれもいない)
【URL】松本市四賀化石館
松本市立考古博物館
縄文~平安頃の古代を扱う資料館です。松本駅の南東、車で20分ほどの山の中。
日通のトラックが立ちふさがっていましたが、これは展示物ではなく普段は居ないと思われます。
市のHPでは中山線ってバス路線が最寄りだと書かれていますが、アルピコ交通の路線図に載ってないので廃止された模様(哀)
松原線の棚峯停留所が一番近くて、徒歩25分くらい。本数は1時間に2本、意外とあります(地方基準)。
入館料は200円。館名通り考古品がずらーっと並んでいます。
奈良・平安頃に信濃国の国府が置かれていたこともあり、古代から集落・都市として発展していたようです。東日本最古レベルの古墳も見つかっています。
信州の中心と言えば松本!見ろ、長野市がゴミのようだ!、、そんな時代もありました(哀愁)。
というわけで掘り出し物の種類もさまざま。縄文時代の器、上から見ると普通の皿に見えるけれど、横から見ると穴がブツブツブツブツ。なんという気味の悪さ。集合体恐怖症の縄文人は悶絶不可避。
壁に空いている穴の中には土偶の展示。壁はオシャレな装飾ですが、土偶自体はそろいもそろって変顔でした。人知を超えたものに祈る祭祀なので、超人的な顔が求められるのです。
この展示の裏側では石棒が並んでいました。10本くらいあったが、ここまで石棒ばかり並べる博物館もあまり無いのではないか。きっと小学生男子は大盛り上がりで、こればっかり見てると思うし、そんなんだから高学年の女子には軽蔑される。
照明の関係でちょっとシルエット気味になっているのが逆にモザイクみたいですね(小学生)
「人面付き土板」。珍しい品でなかなか発掘されないようです。描かれているのは女性らしい。どうやって分かるんだ?
なお発掘時はこのように割られて重ねて置かれていました。扱いが雑である。
一部分を壊すのは土偶ではよく見ます。足の病の完治を祈って、土偶の足を折って埋めた説とか。しかしこの土板は体が真っ二つですからね。全身爆死するくらい悪かったのだろうか。
須恵器の展示コーナーでは出土品を手に取って眺められるんですが、もとの土器の形が想像できないレベルでぐちゃぐちゃで、一体どうすればいいんですかね(困惑)
精製に失敗した鉄の塊と言ってもたぶん通用する。
また珍しい品として、弥生時代の「手あぶり型土器」なんてのがありました。手を温める暖房用具っぽいのでこの名前だそうですが、私にはネコの家に見える。ねこつぐら。
用途は不明。犬は縄文時代から日本にいましたがネコの輸入は奈良時代以降なので猫ハウスでは無いようです。残念。
館内はおしまいです。外には小さな広場と、竪穴式住居らしきものがありますが、どう考えても3密を防げないので閉鎖されておりました。
しかし広場内に何体か動物を描いた板があるんですが、やらしい表情してるんですよね。もうちょいファンシーに出来なかったのか。左から2体目はそもそもこの世のものでは無さそうに見えますが。みんな、輪ゴムで仕留めておしまい!
【滞在時間】30分
【混雑度】★(だれもいない)
【URL】松本市立考古博物館
飯田市上郷考古博物館・秀水美人画美術館
飯田市の古代に特化した博物館に、美人画の美術館を並べたという異種格闘技系の施設です。なぜその組み合わせなのか。
最寄り駅はJR飯田線の伊那上郷駅ですが、飯田駅からでも徒歩25分で来れます。しかし飯田線って1時間に1本程度と、意外に本数あるんですね。3時間に1本くらいかと思っていたよ。
入館料は200円。博物館の展示はこの1部屋です。古代~奈良・平安くらいまでの出土物を扱っています。その時代の遺跡が周辺に結構あるそうです。
鎌倉時代?それは失われたのだ。
なので展示品はこういうものです。石器とか縄文土器。これはこれで良いんですが、ちょっと変哲がなさすぎてインパクトに欠けるところ。もっと変顔の土偶とか超絶巨大石棒とか掘り出してどうぞ(無茶ぶり)
そのことを博物館側も理解しているのか、展示室の中央に大きなモニュメント物体があります。なんじゃこりゃ。
後ろから見ると材木であった。うーん(審議中)
いろいろネタを探してみたけど遺跡から派手なもの見つからなかったので、とりあえず大きなもの置いたのか。「なんでも良いから目立つものを!」という学芸員の苦労が滲み出ている、のかもしれない。
ただ展示解説によると、このヒノキは弥生時代のもので、山中で発掘されたのだと。てっきり裏の山で伐採したただの大木かと思った。まさかの化石。いちおうヒノキの香りはかすかにする。
とつぜん壁から手がにょきにょき生えていてビックリした。現代アートの始まりです。考古博物館とはいったい。
よく見ると、石器の使い方を説明する展示であった。
さて、これで博物館は終わってしまいました。滞在20分くらいかな。
博物館の横にもう1棟ありまして、民家でも倉庫でもなく、秀水美人画美術館です。
飯田出身の日本画家 浅井秀水を扱っております。
館内撮影禁止なので、画集の表紙で作風をご想像ください。まさに日本画+美人画。
ネット検索しても、Wikipediaにも何にもヒットしないくらいの知名度ではありますが、フランスでは100年以上の歴史がある展覧会サロン・ドートンヌの会員になっているので、あちらでは有名なのかもしれません。
何点か、美人画なんだけれど首が変な形になっている絵があったので、フォービズムでキュービズムな影響を受けているものを思われます(適当)
おしまい
【滞在時間】30分
【混雑度】★(誰も居ない)
【URL】飯田市上郷考古博物館
柳田國男館・日夏耿之介記念館
飯田市美術博物館に併設されている2棟です。まずは柳田國男館から。
説明不要かと思いますが、日本における民俗学を始めた人で、『遠野物語』のカッパは代表作。全国各地を歩き回って文献だけでなく口頭伝承をかき集め、伝説や怪奇話が単なる与太話ではなくて歴史に基づいた寓話だと解き明かしたりしてました。
んで柳田國男の実家は松岡という姓なんですが、元飯田藩士の柳田家の養子になっているので、飯田へは生涯で何度か訪れており、地域の人々と交流があったそうな。
この建物は、東京在住だった柳田が書斎&応接室として作ったものですが、没後になって飯田市に寄贈されたそうです。
メインホールがこちら。ぎっしり詰まった本棚に囲まれています。
柳田はよく客を招いて懇談や研究会を開いていたらしい。そのためこの建物は「民俗学の土俵」とも呼ばれています。
置いてある本は自由に読んでいいそうです。
自由に読んでいいと言われても量が多すぎて選べませんがな。
左側は柳田の著作、右側は「柳田國男について語った本」で纏まっています。語り過ぎだし、語られ過ぎである。
柳田は幼少期からかなりの読書マニアで、自分の家の本ばかりか隣の住人の家にもあがって片っ端から蔵書を読破していたそうな。
森鴎外や田山花袋らと知り合いであり、学生時代は文筆家を志した時期もあったそうですが、結局やめて農商務省の官僚に就職し、その後に学者に転身。
なお学生の時に恋愛問題でかなり悩んでおり、それを唯一うちあけたのが田山花袋なのだが、田山はその話をネタに小説を書いたそうです。これはひどい(笑)。
もう1軒は日夏耿之介(ひなつ こうのすけ)記念館。明治~昭和の詩人・翻訳家。
こちらは飯田の人で、自宅を復元して記念館にしています。
そういえば、柳田國男館もこちらも入館無料です。
詩・随筆・文学研究と幅広くやってたそうですが、名が知れ渡ったのは翻訳業でしょうか。オスカー・ワイルドやエドガー・アラン・ポー(江戸川乱歩の元ネタ)など英米文学を和訳して出版していたので、それを読んだ日本の文学者に影響を与えたようです。
推理モノや怪奇小説が多かったそうで、ホグワーツの先生みたいな服装はそこから来てるんですかね。
展示室の様子。あと和室も数部屋ありますが、どれも小規模なのであまり観覧時間は掛かりません。展示品は書簡や遺品など。
日夏の翻訳書の影響を受けた一人が、なんと三島由紀夫。同じ作品でも翻訳者次第で雰囲気やセリフ言い回しなど変わってくるものですが、三島は日夏の訳文スタイルを参考にしていたそうです。まぁ何を参考にしたら三島由紀夫ができあがるのか、まったく想像もつきませんが。
また日夏の翻訳をもとに、三島が脚本を書いた戯曲『サロメ』を上演したりしました。
(蔵書で自宅を侵食されている日夏さん)
翻訳家なんて言うから結構お金持ってる人生かと思いきや、20代の時に父が経営する銀行が破綻して一家は破産寸前。父は狂死したらしい。どんな死に方なのだ。
厳しい家計の中、母親がなんとか資金を工面して日夏は最初の詩集を出版。文学者としてのスタートを切れました。良いお母さんだなぁ(感涙)
なおこちらが出版記念パーティー会場です。めっちゃ遊んでるじゃないか。一番左、着席しているのが日夏です。
会場には芥川龍之介、北原白秋らも同席しています。さぁ芥川はどこでしょうか。
最後に茶器のコレクションがありました。集めるの好きですねえ。本棚ほどカオスな状態にはならなかったようです。
というわけで郷土の人々を知られる資料館でした。おしまい。
【滞在時間】2つあわせて30分
【混雑度】★(誰も居ない)
【URL】飯田市美術博物館 | IIDA CITY MUSEUM
飯田市美術博物館
飯田市の美術館&博物館です。略称は「美博」らしい。化粧品か。
美術館は日本画家 菱田春草をメインで扱ってます。美術館:博物館=1:2くらいの割合。プラネタリウムも併設。
入館料は310円。飯田駅から徒歩20分ほどです。
まずは博物館の方から。古代生物の標本がお出迎えです。飯田で発掘された恐竜だと思ったら、実はぜんぜん違う地域のものだと知ってずっこける。左側でのっしのっししているスピノサウルスは和歌山&群馬産です。
こちらは2体の動物が争っている面白い化石です。肉食性のヴェロキラプトル vs 草食性のプロトケラトプス。相手の足に激しくかみついております。
しかしこれも中国北部で見つかったもの。そしてレプリカです。恐竜たちは飯田へは移住しに来なかったのかな?JR飯田線が使いづらいので敬遠されたのかもしれません。
自然展示室はジオラマが大きくて本格的。伊那に生息する様々な生物の紹介です。
伊那の標高は最高地点で3,000m、最低で200mとかなりの差がある。低地のものから高山植物まで幅広くそろえています。
ジオラマの中、なにか小さい物がぶら下がっている。よく見てみたら、、クモ?細かいところ凝ってますねぇ。森の中を歩いていると知らずに糸が頭に絡みつく感じ、思い出してしまうので止めていただきたい(真剣)
チョウチョは日本の種の半数が伊那で見つかるそうです。飯田で発見された新種もいるのだ。「クロミドリシジミ」。すごい!希少種!って言っても、目の前に現れたら気づかずに倒してしまうと思う。だって蛾なんだもの(直球)
蛾には申し訳ないが、もっと大事にしてあげたいのがライチョウ。伊那周辺の中央アルプスでは50年ほど前に全滅し、今や北アルプスや南アルプスの一部にしか生息しない。
ただ2019年に別の山から飛んできた1羽のメスが住みついており、この子に別のライチョウの卵を育てさせて、中央アルプスのライチョウ復活作戦を環境省が主導しています。
ライチョウの隣にキツネの標本が置かれていました。ライチョウの雛が全滅したのはこいつが食べたからなんですけどね。皮肉な配置になっております。
自然の次は人文ゾーン。飯田の民俗や祭祀文化を紹介しています。
中でも目立つのが、右のドデカ獅子舞くん。正式名は「東野大獅子」といい、7年に1度しか行われない飯田お練り参りに登場します。
この祭りではデカい獅子舞で町内の厄払いをするそうです。しかし昔の獅子舞、デカすぎないか・・。全長25m、中の人は20~30人。当時の若者衆が「奇抜な出し物を!」って作ったらしい。神事が大学の学園祭みたいになっている。
奇抜なものと言えば、こちらの竜の屋台も結構な大きさです。本来は2層・3層と出し物が乗っかり、結構な高さがあったそうですが、町中に電線が設置されると、それにぶつかって危険だというので倉庫ベンチを温める日々になりました(完)。ドラゴンも電気通信には勝てませんねぇ。ネット出来なくなっちゃうからね。
別の祭りでは「オトコガミ」「オンナガミ」という人形を作って担ぐそうですが、どう見ても卑猥です本当にありがとうございました。
とくにオトコガミの方は形が無駄にリアルなのでPTAに見つからないといいですね。
飯田の名産品です。左が元結、右が水引です。水引は引出物で見たことある方が多いと思いますが、元結は和紙を幾重にも束ねて頑丈にしたもので、髪結いに使用します。
飯田では楮(こうぞ)という桑科の植物を栽培しており、これを和紙にして加工し、商品に仕立てています。良質なので、全国の生産量7割を占めるらしい。
ちなみにJR飯田駅の真正面にも、これらのお土産店があります。私はそこにコンビニを置いて欲しかったよ(最寄りのファミマはもうちょい先)。
ところで博物館、展示のすぐ横にモニターが置いてあって、近づくと自動で映像が流れ始めるのです。分かりやすいビデオで、展示に関するイメージを広げることができます。意外と先進的だなぁ(失礼)。
最後は美術館。日本画の菱田春草(1874-1911)が飯田出身なので、この人をメインに据えています。というか、この人以外の作品は無かった。
明治時代、日本画改革に取り組んだ岡倉天心の弟子で、横山大観や下村観山は友達。
(『黒き猫』)
ネコを描いた作品が幾つかあったので、ネコ大好きマンなのかもしれない。
伝統的な日本画のテーマを用いながらも西洋的な写実性を取り込んだり、横山大観と一緒に新たな画法「朦朧体」を推し進めたりと革新的スタイルでした。そのため画壇には評価されず、私も美術館で見た解説をそのまま書いているだけです()。
若干37歳で病死してしまい、横山大観は「春草が生きていれば自分の絵は10年分進歩した」とその死をかなり惜しんでおります。まぁあんたは1日1升の酒を飲んでいたにもかかわらず90近くまで生きてますからね。
というわけでした。建物自体もなかなかオシャレで近代感あるので注目してどうぞ。
また他に「柳田国男館」「日夏耿之介記念館」という2つの施設が敷地内にあるのですが、長くなるので別の記事にします。
おしまい
【滞在時間】60分
【混雑度】★★(他に数人)
【URL】飯田市美術博物館 | IIDA CITY MUSEUM