伊賀流忍者博物館
忍者ってめちゃめちゃ超人的イメージがありますけども、その本来の姿を研究する珍奇な方々も居て、国立の三重大学では国際忍者研究センターなるものを立ち上げ、「忍術書に書かれている忍術を現代科学で分析するとどうなるか」ってのを真面目にやっているそうです。関連書籍『忍者学講義』を読んでみたんですが、食べ物とか薬とか早く歩く方法とかが分析されてました。
個人的には「“狼煙(のろし)はオオカミの糞を燃やすと良い”と忍術書に書いてあったのでやってみた→吐き気を催すくらい尋常じゃない臭さで、臭気計が振り切って測定不能になった」「臭すぎて正常な思考が失われた」の回が面白かったですね。
伊賀流忍者博物館では、そうした“現実ベース”の忍者について紹介されています。忍者ネタは子供にも人気なので、お子様向けのからくり屋敷・忍者ショーもあります。
伊賀上野駅から徒歩10分程度。入館料は大人800円、中学生以下500円。ただ忍者ショーは別料金みたいです。そこは現実ベースにしなくて良いですよ。
入場すると、最初はからくり屋敷に入ります。壁に見せかけた隠し扉とか、回転させると抜け穴に通じるとか、屋敷のあちこちにあるギミックで遊べます。お子様方が至るところではしゃぎ回っているので、大きな忍者の皆さんはぶつからないよう注意力を研ぎ澄ませる修練になります。
館内暗かったので私のぽんこつカメラが全然通用しなかったのですが、唯一まともに撮れたのが右の写真。板敷の床下に刀を隠していて、お茶を飲んでいる時でもすぐ取り出して客人を斬れるようにしてあります。保険の外交員が来た時に使ったのでしょう。
忍者屋敷にはいろんな防衛要素てんこもりですが、串刺し用落とし穴もあったようです。これ自分の家に備えておく必要あるんですかね。怖くて夜トイレに行けないよ。
からくり屋敷を抜けると、博物館ゾーンになりました。
忍者について扱った書物が江戸時代に幾らか出回っており、たぶん眉唾物も結構あるんだと思いますが、この博物館は“三大忍術書”の1つ、17世紀に伊賀忍者の末裔 藤林保武が忍術を体系的に著した『万川集海』を保有しているので、それを一次資料としているようです。
この書物、伊賀忍者の間では「主君であっても見せてはならない」と厳格な情報規制の扱いを受けていたそうですが、18世紀に江戸幕府に思いっきり献上されているのであった。代々受け継がれてきた秘伝のスープのレシピが日高屋へ売られた、くらいの無常観がある。
展示を幾つか見ましょう。まずは「忍者そんなことやってない」編から。
水の上を進む「水蜘蛛」。世間に定着したイメージは左の図ですが、実際は右のとおり、浮き輪代わりにしていたようです。足には水かき代わりの下駄をはいているので少しは早く動けるようです。しかし水上をスイスイ進むスマートさから、ぷかぷか~ですからね。海外のNINJA大好き兄貴たちの夢が崩れてしまう。
苦無(くない)は飛び道具として敵に投げつけるイメージがありますが、書物にはそんなこと書いてなくて、穴を掘ったり、縄をつけて木登り用品にしたそうです。こりこりと壁を地道に掘り続ける忍者の図。町の工務店かな?金属製品は当時高そうだからポイポイ投げるわけにはいかんよね。
おなじ理由で手裏剣も、たぶん安くはない武器なので簡単に投げるのためらわれるはずなんですが、いちおう書物には載っているようで様々な形があります。テトラポットからおひさまマークまで。その日の気分で好きなものをどうぞ(ここでニッコリするとサイコパス感がでる)
しかしこれらは目標物に刺さる気がしないのですが。武器というより装飾品では。忍者の間でデザインセンスを競っていたのかもしれない。現代のJKがTikTokやるのと同じノリで手裏剣を投げていた可能性isある。
なお刃先にはトリカブトの毒を塗り、相手の頭部を傷つければ勝ち!みたいな感じらしいですが、手裏剣を手に持った時に自分の指切っちゃったらどうなるんですかね。投げる前に過失自殺して終了になるんでしょうか。
それより忍者の武器として実戦向けなのが手甲鉤ですかね。これで殴られたら絶対痛い。でも忍術とか全然関係ない。結局最後は火力である。
このままだと「将来の夢は忍者!」というお子様の希望を打ち砕いてしまうので、忍者の凄い技能も見ておきましょう。
なんと猫の目をみると現在時刻が分かるのだ。猫の瞳は暗いところで丸くなり、明るいところでは細くなるので、その大きさでだいたい何時か把握する。建物内では使えなさそうなので、屋内任務の時はロレックスでも付けていたのかもしれない。
あと忍者は様々な忍術や敵情に関する知識を持つ必要があるわけで、記憶術は優れていたようです。どうしても覚えられないときは、覚えたい事柄を思い浮かべながら自分の体を傷つけることで記憶したらしい。突然のメンヘラ化はやめてさしあげろ。
ということでした、おしまい。
【滞在時間】1時間
【混雑度】★★★(他の客がちらほら)
【URL】
【読んだ本】
「忍者学講義」山田雄司