C級スポット探索日記

C級スポット探索日記

各地の資料館・博物館・珍スポを回り倒すのが趣味です。転勤族(神奈川→埼玉→長野)

能美市 九谷焼美術館

九谷焼

佐賀県の有田で17世紀初頭に日本最初の磁器製造がされ、それに続いて1650年代に石川県の九谷でも製造されるようになりましたが、1710年頃にぱたっと生産が途絶えた。製造再開されたのは100年後の19世紀前半で、能美市加賀市を中心に幾つかの窯が登場しては消えていき、現代まで繋がっているそうです。

空白の100年間がなぜ生じたのかは今でも謎なんだとか。このときの大聖寺藩主(3代~4代)および加賀藩主(5代目)は揃ってアンポンタンで、先祖が築いた財産を遊蕩三昧で溶かし切り赤字転落させているぐらい暗愚だから、たぶん九谷焼の焼き方が分からなかったんじゃないか。窯で饅頭でも焼かせてたんだと思う。

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九谷焼の窯元って発祥地の九谷だけでなく県内いくつか広まっているので、博物館や美術館も県内に数か所あるんですね。しかし能美市は陶芸家支援プログラムを設けたり、小売店舗を一か所に集めてショッピングモール「九谷陶芸村」を作ったりと、かなり気合を入れているようです。

アクセスは、能美根上駅からコミュニティバス「のみバス」20分100円で来れます。ただ電車の到着時刻とバスの発車時刻ぜんぜんリンクしてないので、ご利用時はお気を付けください。

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美術館に入る前に、その正面に広がるショッピングモール「九谷陶芸村」を見学します。10店舗くらいあるので、様々な九谷焼を見比べてお土産にできます。飲食店は「カフェ九谷」があり、私はそこで昼を食べましたが、それ以外に徒歩圏内には店はほぼ無いと思う。

・・しかし人っ子一人いませんね。マンボウも出てない土曜日だったんですが。つい最近魔王に焼かれでもしたのかしら、この村。

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10店舗あると言いましたが、営業してたのは半分くらいでした。まぁ1店舗の規模が大きいので、それでも結構時間は経ちます。

石川県の人に九谷焼の話するとだいたい「値段が高い」って返ってくるんですが、確かに値が張るようですね。左のトラ太郎は22万円でした。観光客がふらっと買う値段ではないね。

右のは値段かいてありませんが、それ以前に許可取ってるんだろうか。。鬼殺隊からの著作権賠償請求vs九谷焼の値段。FIGHT!!

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では美術館に入ります。入館料は430円。

主要な展示室は「紺青の間」と「朱赤の間」。ポケモン初代に寄せてるわけではなくて、九谷焼の分類として「青手」というのがあるのでこれが青の間、「赤絵」というジャンルが赤の間に並んでいます。

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ポケモン初代は大正義ゼニガメ!ということで青の間から行きますね。

これが九谷焼における「青手」様式・・・ぜんっぜん青くない!緑と黄色やんけ。

どうも青手とは、緑・黄・紫・紺の4色を使用する品を指すようです。青色、使われてすらないのに名義だけ取られてるぞ。

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この4色に赤を足して計5色になると、「五彩手」とか「色絵」などと呼ばれるようになります。「絵」という漢字が入るように、カラフルに写実的な絵を描くのが色絵様式になるそうです。でも日本絵画って写実的って言えるんですかね?超巨大雲とかウネウネ松とかよくあるじゃないか。

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染付の作品もありました。ただ染付って、きれいな白地に青い装飾ってイメージですが、江戸時代後期の作品にもかかわらずあまり綺麗な白じゃない気がします。

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この2つは佐賀県にある九州陶磁文化館で撮った有田焼で江戸時代前半の作品ですが、だんぜん綺麗な白である気がしますね。

原料である陶石の問題なのか知りませんが、きれいな白磁がつくれる有田に対し、九谷では作れなかった。それならカラフルな絵具で器全体を塗ってしまえば良いのでは、となって先ほど見た青手や色絵が登場したそうな。最初に見た青手の作品なんてそんな感じでしたね。

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赤バージョンの部屋に進みますが、5色で塗りつぶすに留まらず、派手派手な方向へ進んでいき、何を食べても唐辛子味になりそうな「赤絵」、金彩をほどこした「金襴手」が登場。これ有田焼もそうなんですが、海外輸出品としてはド派手なのが受けた時代なのでこんな品がいっぱい作られたそうです。
明治には九谷焼の生産量の8割が輸出されるほど需要が高まり「ジャパン・クタニ」と名が知れ渡りましたが、欧米の不況や粗悪品混入による信頼性低下などで1880年代にはもう下火になっちゃいました。たった20年足らずの九谷バブルであった。

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人間国宝の徳田八十吉さんによるもので現代の作品ですが、館内の作品で1番良いと思ったので載せます。異空間に引きずり込まれるような力強さがありますが、ずっと見ていると私の頭がパラレルワールドになってしまいそうなので5分以上連続して見ないようにしましょう。ミスチルの『重力と呼吸』ジャケットに似ている。

ちなみに徳田先生の作品はHP見ると80万円くらいで買えるようです。車より低価格で人間国宝の作品を買えるって思うと、すこし考え変わりませんか?変わりませんか、、そうですか。。

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展示品はもっといっぱいありますが文字数が迫ってきたので、バルタン聖人でもご覧ください。九谷焼ウルトラマンシリーズを2011年から作り始めたそうです。伝統工芸とクールジャパンの融合。エヴァンゲリオンも作ってほしい。旧劇の巨大綾波とか。

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2階に上がると、九谷焼の製造解説がありました。ビデオが流れていますがYouTubeでも公式が同じ映像のせています。

これは絵具の写真なんですが、左が紺色で右が緑色です。。。え、どっちも白じゃん。

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和絵具なんですが、焼かないと色が出ないそうです。

左が焼く前で、右が焼いた後。全然違う。

これ絵付師は大変ですね。「あれ、いま塗った色、紺だっけ緑だっけ・・?」って私だったら絶対なる(記憶喪失)。せっかくの器を台無しにして、ろくろ担当からぶっ叩かれること間違いなし。

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最後にですが、この美術館はもう1棟「浅蔵五十吉記念館」があります。美術館の入館券と同じものでそのまま入れます。

文化勲章を受章した名工 2代目 浅蔵五十吉さんを記念して作品群を展示しています。

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しかしこの作品がねぇ・・動物たちがまったく可愛くないのですよ。左の写真の鳥や魚は目がイッちゃっており、右の鳥は「眉毛と髭の濃いオッサン」「変なおじさんの時の志村けん」にしか見えなくなってしまった。

日展顧問も務めていたそうですが、その期間はラリラリしている動物作品もしくはドリフのコントが多数入賞したことでしょう。

おしまい

 

【滞在時間】3時間(昼食含む)

【混雑度】★★(他に数人)

【URL】KAM 能美市九谷焼美術館