C級スポット探索日記

C級スポット探索日記

各地の資料館・博物館・珍スポを回り倒すのが趣味です。転勤族(神奈川→埼玉→長野)

深田久弥 山の文化館

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日本百名山ってどこかのしかるべき機関が選定してるのかと思ったら、登山大好きおじさんが1人で全部選んだものだって。俺の考える最強の山100個。なんじゃそりゃ。
しかしそれが人口に膾炙して名のあるタイトルになっているのだから、よほどの山岳ガチ勢が精魂込めて選んだのかもしれない。その人 深田久弥(きゅうや)が石川県大聖寺出身で、記念館が建っているので見に行きました。

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大聖寺駅から徒歩20分と、ちょっと距離あります。

建物は山長という織物会社の事務所で、「山」という漢字が入っていること以外に深田久弥と特段関係はなさそうですが、国の登録文化財に入るくらい立派なものだそうです。明治末期の建築。

入館料は350円です。

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展示室。ちなみに暖房は完備されているので凍死しなくても大丈夫です。

深田さんは東京帝大卒業、出版社勤務を経て、感情豊かで哀愁漂う抒情的小説作品を執筆。川端康成井伏鱒二らと同世代で、鎌倉の文学者集団の1人として名をはせる。若き日の太宰治が遊びに来たり、中島敦が『山月記』の原稿を持ってきたから出版社に掛け合って掲載させてもらったり。国語の教科書で見た「そこのトラ太郎は我が友の中の誰かではないか?」という名文(うろ覚え)は、深田先生の助力無くして世に生まれなかったのです。

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しかし深田久弥さん、次第にそういう小説を書かなくなり、代わりに山の文章ばかり書くようになります。ちっちゃな頃から山好きで頻繁に登山に出掛けており、その結果、高校は留年し大学も中退し、入ってくる収入は片っ端から山岳関係の書籍購入につぎ込んでいたのでいつも貧乏しました。妻子持ちなんですけどね。奥さんの許容メンタル強すぎる。薬師堂に祀って称えた方が良い。

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(左が深田久弥、右が前妻の北畠八穂

ところで小説を書かなくなったのには理由がありまして、深田本人が書いてたんじゃなくて、別の人が書いていたからですね。。。は?

右の写真は、”1人目の”奥さんの北畠八穂。深田の名が売れる前から同棲していて、〆切前日になっても深田がぜんぜん執筆しないものだから、代わりに構想を練って文章まで書いてやったら、深田がそれをまんま出版社に放り込んだという。んで、その評価が良かったと。だから次回作も深田は書かずに遊んでばかり。奥さんは家事をやりつつ小説執筆、深田が校正を加えて出版。しかも奥さんは重病抱えていて寝たきりの期間があり、深田の実家は「長男を障害持ちにやりたくない」と結婚に反対していたので、同棲開始から11年も籍を入れませんでした。

 

ティム・バートンの映画で『ビッグアイズ』ってのがあって、奥さんが絵画を描いて、それを旦那が自分の作品だって売り巻いて世界的に有名な画家になる。2人の結婚生活が破綻した後、奥さんが「本当は自分が描いた」と主張、旦那は奥さんをキチガイ呼ばわりし、最後は法廷闘争になる。

まさかハリウッド映画と同じのを石川県大聖寺で見ることになるとは思いませんでした・・

 

んで、こちらの結婚生活も破綻します。そのきっかけは、深田が不倫してよそに子供を作ったのがバレたからです。son of a bitchを地で行く漢、深田久弥40歳 危急存亡の秋。この畜生度に比べればアンジャッシュ渡部も可愛いものである。「糟糠の妻捨てた選手権」でミスチル桜井・GLAY TERUと競えるんじゃないですかって書こうと思ったけど炎上しそうだから止めておきます。

 

この後、深田は不倫相手の女性と再婚。深田が収入を書籍に投じまくっても文句を言わず支えてくれた薬師如来はこの人になります。てか前妻もめちゃめちゃ支えてくれているし、こういう畜生に限って女性運がすごい良かったりする。

そんなんだから小説は全然書けなくなりますわね。一方で前妻ゴーストライター北畠さんは自身の名で作家デビューし、児童作品を主に手掛けたそうです。同棲時に深田名義で発表した作品を北畠名義に変えるよう訴訟寸前までいったり、当時の生活を赤裸々に暴露したりなど暴走気味な部分もあったようですが。

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しかし再び良き伴侶を得た深田氏は、ヒマラヤ山脈の1つジュガール・ヒマール山麓に挑戦したり(天候不良で登頂はできず)、シルクロード横断したりと人生を大変謳歌した模様。

日本百名山の次は「世界百名山」まで着手しましたがNo.41まで行ったところで逝去。登山中に脳溢血という山男すぎる最期を迎えました。

 

というわけで、百名山よりも違うことの方が記憶に残りそうな人物ではありましたが、この辺の話は当館の展示にはありません。『百名山の人 深田久弥』って本で読みました。観光を終えて帰宅後に読んだけれど、まさかこんな泥沼バトルしてるとは思わんかったよ。むしろ当館は「糟糠の妻を捨てた稀代のクソ野郎」「このクソ人物がすごい!」みたいな売り出し方をすれば、私のような畜生人物好きが集客できて良いのではなかろうか。

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最後に図書室の紹介です。山岳に関する本をひたすら収集しており、『山と渓谷』という雑誌は初回1930年から全号そろっているそうな。地元の山岳ピーポー集って山について熱く語るのだろうか。ついでに貞操の重要性も話し合うと良いでしょう。

 

おしまい

 

【滞在時間】40分

【混雑度】★★(他に2~3人)

【URL】深田久弥山の文化館