日本浮世絵博物館
大規模な城下町 松本にはお金持ちも一杯いたわけで、そういう豪商が趣味で浮世絵コレクションしたのを、この博物館では展示しています。
オーナーである酒井家は18世紀から収集を始め、19世紀には浮世絵鑑定業に乗り出し、さらに浮世絵専門雑誌の創刊・国際博覧会の開催まで行っている。
お金持ちは仕事だけでなく道楽でも食っていけるのだ。
市街地からは車で20分ほどの距離になるが、松本駅からタウンスニーカーというコミュニティバスが出ており、その「西コース」という路線で来ることができる。
なお西コースは短い用と長い用があり、博物館へは長い用になるので注意しよう。
1時間に1本。所要30分くらい。
貴重な美術品を展示しているにも関わらず、館内は撮影可能という珍しさ。
金持ちの余裕は違うのだ、伝統芸術を広めることが主たる使命なのだから。
(橋本貞秀『魚を獲る美人』)
展示品は40点ほどあったと思いますが、企画でコロコロ中身を入れ替えているようです。
夏の時期なので、団扇に描かれた涼味のある絵をこのときは展示しておった。
こんな精巧な絵が載った団扇なんてもったいなくて使えませんが。
(橋本貞秀『東都両国ばし夏景色』)
この橋本貞秀って人の作品が何点かありましたね。
江戸末期~明治にかけて傑出して有名だった浮世絵師で、日本が初めて参加した1867年パリ万博にも出品しているくらい。
特徴としては、このように全体を俯瞰して用紙を何枚も使って描く大規模パノラマ絵。
夏の両国の祭り模様を扱った風物物ですが、しかし橋の上の人口おかしくないですかね。コミケかな?
人を描くというより、延々と〇を並べまくっており、雑なんだか難しいんだか。
まさか実際にこんな混雑具合が起こっていたのだろうか。
もはやパニック映画だな。バイオハザード2である。
あまりの混雑からなんとか抜け出して屋形船に出られた人も、こっちはこっちで大渋滞。
この部分だけ切り取って「壇ノ浦の戦いです」って言っても外国人には通じると思う。
沈没してドザエモンになった船乗りもいます。
やっぱり人混みにはいかないほうが良いね(こなみ)
(歌川国芳『曲独楽 奥山伝司』の一部)
あとは夏関係あるかどうか知らんが、大道芸を描いた作品集が面白かった。
1840年代、驕奢を禁じていた天保の改革が失敗に終わったあとに両国や浅草でパフォーマンスものがニョキニョキ発生したようだ。
しかしこの独楽とヒモの動き方は反物理的すぎますね。
(2代目歌川国貞 『大阪下り早竹虎吉 江戸の花木舞渡り』)
1本綱の上で悠長に傘をさしている芸人の図。
綱は左右に居る子方2人が上から引っ張っているだけで、下には支えがない。
その子方も足を木に引っかけてバランスをとるという危ういことこの上ない仕組み。
(落合芳幾『大阪下り桜綱駒寿 木枕渡り』)
これは積み上げられた赤黒の木枕の上を傘さして渡って歩く無謀な行為をする方々。
後ろの人は、ご丁寧にも渡り終えた枕を後ろ足で蹴り崩して観客の恐怖感を煽る演出になっている。
なお地上からの高さは180㎝以上あったそうです。
現代でも面白く見られそうなサーカスですね。
(歌川国貞『籠細工 関羽』)
最後の絵は、竹で編んだ籠目を用いた人形をモデルにしています。
1810年代に浅草寺で見世物となったこの関羽は、高さ6.6mもあって見物客も大盛り上がりだったそうな。
6.6mって、さすがにそれは鬼神軍神の関羽でも巨大すぎやしませんかね。4mくらいまでなら「あぁ、いつもの関羽だな」妥協できるかもしれませんが。
ということでした。
絵よりも絵の題材についてばかり書いてしまったが、当時の風俗を記録するのも浮世絵の重要な役割なので、その辺を楽しんでもなに気にすることはない。
おしまい
【入館料】1000円
【滞在時間】60分
【混雑度】★★★(ちらほら)
【URL】