C級スポット探索日記

C級スポット探索日記

各地の資料館・博物館・珍スポを回り倒すのが趣味です。転勤族(神奈川→埼玉→長野)

奥飛騨さぼう塾

 

平湯温泉バスターミナルから新穂高ロープウェイへバスで20分、中尾高原口というところで降りるとすぐ、奥飛騨さぼう塾がある。

国土交通省の資料館です。

 

 

バスで降りた人、ほかに居なかった。

あたりまえだ、周りには山と川しかないのだもの。

どうして国交省もこんなところに資料館を建てたのか。

 

 

入館は無料です。そして誰も居ません、受付も含めて。

好きなようにやりましょう。

 

(1979年土石流被害の様子)

 

このあたりはイタイイタイ病で名が知れている神通川流域であるのだが、昔から災害が多い地域で、20世紀には10年に1~2回ペースで発生。

それも斜面崩壊・土石流・洪水・雪崩・しまいには焼岳噴火など種類も様々。

流域にずっと住んでいたら一生の間にあらゆる災害体験をコンプリートしてしまうのではなかろうか。嫌なフルコースだな。

 

 

(公式HPより)

 

ちなみに神通川というのは岐阜県高山市の川上岳(マップ左下)に発し、途中で中小河川をやたらめったら呑み込んで、富山湾に辿り着く。

神通川」という呼び名は富山県で言われているもので、岐阜県では「宮川」と名付けられている。

 

・・にしても中小河川おおすぎやしませんかね。

まるで毛細血管である。

 

国交省神通川HPより)

 

簡略化したのがこれ。

富山県のど真ん中を突っ切ってますね。

なおイタイイタイ病の原因であるカドミウムは、上流である岐阜県神岡鉱山から流出したものです。

 

 

なんでこんなに土砂崩れやらが発生しているかと言うと、焼岳を始めとする北アルプスの皆様が古代にぽんぽん噴火したせいで、もろい火山灰が地面に積もっているからだ。

地震や台風であっさりズレたり流されたりして、下流域にドボドボ土砂が流れ込んでいく。

焼岳さんなんて下手すると毎年噴火してるからね、もうちょい落ち着いてクレメンス。

 

というわけで20世紀になると土砂対策として砂防工事に取り組むことになる。

その関係の文書や当時の新聞がこのコーナー。

 

富山県側の意見書)

 

洪水被害を受けやすいのは下流である富山県だ。

富山湾に土砂が流れ込んできて水深を浅くし、船舶が入れなくなってしまう問題もあった。

1914年、当時の富山県知事は「(神通川上流である)岐阜県飛騨郡は、富山県に加入すべし」と主張。

飛騨郡が富山県に入れば、対策を岐阜県に頼らずとも自ら全部できるからね。

よほど岐阜県のこと信用してないんだな・・

 

 

それに対して岐阜県・飛騨郡は猛反発。

「本県の歴史を破壊するうえ、人民を動揺させており、永久に排斥すべし」と激烈な口調でキレており、新聞にも反対広告を載せている。

どんだけ富山君のこと嫌いなのよ。

それに飛騨が岐阜県に組み込まれたのは1876年のことであり、せいぜい40年前くらいなんですが、岐阜県民にとっては中国三千年に引けを取らない壮大な歴史であるようです。

 

ともかく災害対策どころか新しい災害作り出す勢いで富山と岐阜が対立したので、1919年に国が間に入って直接工事をすることになったのでした。

そんなんで国交省がこんな地方にいるわけ。

当時は内務省だったけれども。

 

 

さて砂防堰堤を作ります。

コンクリートが砂防に用いられるのは1950年代の話なので、当時はまだ石がメインです。

じゃんじゃん掘りだして運びましょうね。

 

 

石はこれくらいのサイズに切り出して運び、積み上げてたそうな。

重そう。

 

 

 

四人一組で運びます。

 

 

2人一組になれなかった人のために、一人用運搬具もあるよ。

きつそう。色んな意味できつそう。

 

 

そりでゴロゴロ。

木馬そりって名前だけど、馬の役は人間である。

かなしいなぁ。

 

 

んで、これが砂防堰堤です。

戦後のコンクリート製のものですが。

 

 

上のほうの山で、コンクリートを製造しています。

 

 

出来たコンクリートは、管を通って堰堤に流し込んでいく。

ダイナミックだねえ。

 

 

堰堤の上では土方のオヤジが作業しております。

コンクリートに巻き込まれて、「おれ自身が石像になることだ」にならないように気をつけましょう。

 

 

現物のお写真はこちら。

 

 

当時の機材も展示しております。

 

 

2Fへ。

 

 

このフロアのメインは砂防の模型。

どんな役割をしているか見てみましょう。

 

 

山の下には町が広がっています。

ビルの位置が凄まじく変であるが、気にしない。

 

 

山の上には土砂が積んであり、落ちる時を今か今かと心待ちにしております。

 

 

その土砂をブロックしようと、砂防堰堤が2つ待ち構えております。

 

 

では、荒れ狂う土砂を解き放ち、砂防堰堤と対決させましょう。

果たして結果は~じゃじゃーん。

 

 

土砂は見事に砂防に食い止められ、下流部の街へは被害が出ませんでした。

おめでとうございます。

 

 

んじゃ、今度は砂防外しますね。

はたして町の皆さんは生き残れるかな?

 

 

やってみた結果がこれだよ!

土砂は食い止めるものがなくスムーズに流れ落ち、故郷の村は焼かれてしまったのでした。

おお、しんでしまうとはなさけない!

 

というわけで、砂防って大事だね(こなみ)

2018年に起こった広島の土砂災害でも、3000億円かけて整備した砂防が機能。

砂防が無ければ2兆円の被害損害が出ていたとされている。

某政党に仕分けされなくて良かったね(にっこり)

 

 

他にも、アンカー工の重要さを示す模型があります。

 

 

アンカーが刺さっています。

これを抜くと・・

 

 

けっこう派手にずり落ちていきますが。

アンカーは地滑りを防ぐために施されているのね。

押すと世界が壊れるスイッチみたいで、たいへんなRPG感を出しております。

 

 

砂防の機能の説明は行政お得意のパネル展示でもされてますので、寝ないでちゃんと見ようね(コーヒーを必死で飲みながら)

ある程度の土砂を溜めることで川底の傾斜が緩やかになり、急に土砂が流れるのを防ぐことが出来る。

「砂防に砂が溜まっていて、あれじゃあ機能しないじゃない!」と反対派の方々は仰るらしいですが、むしろ機能させるために溜めてる部分もあるみたいよ。

 

 

あとは砂防以外の、周辺環境の展示。

おそらく北アルプスで獲れると思われる石のみなさん。

 

 

そしてチョウチョの標本。

これ、ここに置く必要ありますかね?

「とりあえず置いとけば誰か喜ぶだろう」と思われている気がしてならない。

まぁ現にこうして写真撮ってる客がいるわけですが。

 

そんなんで、砂防の仕組みや模型やらで案外たのしめたのでした。

ロープウェイやクマ牧場など人気の観光地に行く客層はこんなところ来ないと思われるので、空いててオススメ。

そうして相変わらず砂防の認知度は低いままなのであった(完)

 

 

以上

 

 

【交通手段】中尾高原口バス停からすぐ

【入館料】無料

【滞在時間】60分

【混雑度】★(誰もいない)

【URL】

www.hrr.mlit.go.jp