安曇野ジャンセン美術館
アルメニア人画家ジャン・ジャンセン(1920-2013)を扱っております。
ジャンセンを扱っている美術館は世界各地にあれど、この美術館の主はジャンセン大好きすぎて他に類がないほど作品を収集したので、世界初のジャンセン専門美術館となっているそうです。
最寄りは穂高駅ですが、徒歩だと5kmくらい&上り坂で辛いと思います(率直)
駅前でレンタサイクルがおススメ。
まぁ普通は車で来ますかね。
敷地内は結構広くて、木立の中を通って美術館へ行きます。
季節次第では昆虫さんが大勢いらっしゃるので、好きな方は喜ぶだろうし、嫌な方は泣きたくなるだろうが、ここは安曇野なのだから諦めましょう。
入館料は850円とお高めです。ここに限らず安曇野の美術館はそれくらいのお値段。
まぁ芸術には金がかかるのだ(古のことわざ)
※ 下記の絵はジャンセンの作品ですが、ただ単に私が気に入っているものであり、この美術館に無い作品も含まれている気がします(うろ覚え)。
(『肘をつく少女』1945)
さてジャンセンの絵画を見ますが、その前に簡単な背景。
アルメニア人の父を持つジャンセンはトルコで出生したのだが、そのトルコではジャンセンが生まれる数年前にアルメニア人大虐殺が行われている。
戦争もあって一家はギリシャへ逃れた後、パリへ移住しているのだが、そこでジャンセンは足に大けがを負って3年も病院で過ごす羽目になり、友達も出来ずに孤独な日々を暮らしたようである。両足粉砕複雑怪奇骨折でもしたんでしょうか。
そんな感じで出自が暗いのです、この人。
絵画も同じ根から来ているのか、基本的に背景が粗っぽくざらざらしていて不穏な空気。
登場人物の目は暗く憂いを帯びており、ハッピーな表情はまず無い。 足も裸足で薄汚れているようで、どう見ても金が無い家である。
(『ヴェニスの運河』1966)
ヴェニスに滞在したときにその豊富な水辺の風景を幾らか描いており、「ここで鮮やかな色彩表現を習得した」と言われている。
のだが・・水辺と言うよりサイレントヒルの裏ですかね、っていうくらい配色が暗くて不穏すぎる。
だいたい水辺なのに、なぜ赤と黒がメインに据えられてるんですかね。ヴェニスの運河って、こんなにどす黒いの?中国じゃあるまいし(唐突なdis)。
ここでの主題はヴェニスの風景では無く、そこで住んでいる人々の苦しい生活事情と精神状態なのかもしれない。衛生面やばそう。
(『マゾルボの橋』1967)
館内で撮影可能な画が2枚だけあって(どっちもレプリカ)、これはその1枚。ヴェニスをテーマにしたものです。
こちらは青い配色がされているものの、それ以上に白い靄が掛かり過ぎていて、運河なのか朝の港なのか場所が分からない仕様になっております。
てかそれ以前に右側にある建物が真っ黒で廃屋臭がハンパなく、まるで魔王に焼かれた村である。
(『王と女王の舞踏会』1980)
60歳前後くらいから仮面舞踏会をテーマに描き始める。
仮面と言うより幽霊舞踏会ですかって言いたくなるほど、血色の悪く表情の怪しい連中が画面いっぱいに大集合!怖いよ。
人間はみんな役割に応じた仮面をずっと付けていて、それを剥がせばグロテスクな動物が下にいるだけ、ってことらしい。
本人たちは気づきようもないが、客観視するとコメディにも悲劇にも見える。
究極の悲喜劇みたいなものをジャンセンは求めていて、その辿り着いた先がこれ、なんだそうな。
そんな感じでジャンセンの絵画をまとめて見られる、なかなか無い機会なのでした。
ジャンセン本人も来館したことがあるようで、写真も飾られていたよ。本人公認のオフィシャル美術館で、サイレントヒル的光景を眺める優雅な一日をどうぞ。
おしまい
【交通手段】穂高駅から5km(上り坂)
【入館料】850円
【混雑度】★★(他に2~3人)
【滞在時間】40分
【URL】