ホキ美術館
千葉市緑区(南の方)あすみが丘という住宅地を歩いていると、突然コンクリート造の巨大建造物が現われる。
ホキ美術館である。
2010年に開館した、けっこう新しめな施設。
「ホキ」ってなんだ?と思ったが、美術館の館長が保木さんということ。
美術館の入り口に向かっていくわけだが、道のかたわらに鉄骨が突き立てられている。
とても多い。
あれ?もしかしてここ、怖いところ?
ヒヤヒヤしつつも、入り口に到着。
(画像はwikiから ホキ美術館 - Wikipedia)
館内は撮影禁止。
入口すぐにあるのはショップで、館内で展示している絵画をもとにした絵ハガキを売っておりますが、ご覧の通り品のボリュームがハンパない。
展示作品ほぼ全部あるんじゃないかってくらい。
裸婦とかガンガンに描いてあるやつもあるので、それを実際にハガキとして投函する勇者は我が国にどれくらい居るのだろうか。
(館内のレストラン。画像はwikiから。ホキ美術館 - Wikipedia)
ショップの奥に受付があるので、そこでチケットを買うのだが、1800円。
たっけー!箱根とか観光地ならともかく、千葉の緑区でこれは衝撃のお値段である。
館内のレストランはランチコース3000円ほどだし、上流階級を客層として据えているのだろう。
あすみが丘なんぞにリッチなマダムが居るのかどうかは分かりませんが。
(美術館で配布されるポスター)
さて、ホキ美術館は写実絵画を専門とする美術館である。
写実絵画とは、文字通りに写実的に対象を描いたものであるが、その写実のレベルがハンパないことにまず驚く。
このポスターに載っている人物、ぜんぶ絵画。
写真ではありません。
(三重野 慶 『言葉にする前のそのまま』)
このときは人物画の企画展をやっていた。
やっぱり写真にしか見えないけど、絵ですよコレ。
人体もそうだが、水の揺れとか、光の反射具合や影とか、水底の石の立体感とか、リアル以外の何物でもない。
どうやって描いたの、3Dプリンタ?
ちなみにこの作品は、数年前に美術館内で行われた人気投票で1位を獲得したとか、書いてあった気がする(うろ覚え)
納得なのだが、投票理由の大半は「モデルの表情と服の濡れ具合」じゃないですかね(名推理)
(山本大貴『静寂の声』)
人物画で一番驚くのは、髪の毛。
垂れたり束ねたり流れたりの自由な動きまで、精緻に表現されている。
コップの模様・本の印字など小道具も、油断はされていない。
あと画像だとインパクト薄れるが、実物を見るとモデルの右腕とかギターの質感が本物すぎて感動する。
後ろに掲げられているのはマチスの絵。
マチス君、作画もうちょい頑張りましょうね(無礼)
(野田弘志『聖なるもの THE-IV』)
人物画だけでなく、静物画や風景画もあります。
この作品を製作した野田弘志は写実絵画の巨匠だそうで、「余計なものをすべて排除して、描く対象の本質・存在そのものを表出したい」みたいなことを言っている。
私のような芸術オンチが理解するにはキャパオーバーだが、巣の底にしっかりと置かれている卵に、なにかしらゴロッとした質量の大きさは感じるであろう。
対象を写実的に描くことは19世紀まで当たり前であったが、カメラが登場すると存在意義が薄れていき、その対抗策として「芸術は爆発だ」に代表される抽象芸術が生まれていったそうな。
一方で斜陽だった写実絵画に入れ込む野田のような人間もおり、「絵で描かなくてもカメラで写せばいいじゃん」とか言い出すミーハーをぶちのめす為の(?)作風や思想を鍛えていって、今日に繋がっている様子。
館内にギャラリーは8つあるので、真剣に見ていると2時間くらいは吹き飛びます。
そして内装も気合入れて造られており、解説パンフレットまで配布されている。
入り口付近にあった大量の鉄骨は柵の役割 & 隣接する昭和の森公園の木立をイメージしていたらしい。
写実的な表現ですねえ(適当)
展示室の床はゴムチップ製であり、長時間歩行しても疲れが足に来にくい配慮がされているなど、工夫は様々。
建築マニアは、絵画そっちのけで内装ばかり鑑賞しそうである。
(美術館入口。画像はwikiから。ホキ美術館 - Wikipedia)
というわけでした。
ところで美術館の外観、私が入ってきた方向とは反対側から見ると、こんな面白い形しているらしい。
まったく気づかなかったので(無能)、画像はwikiからです。
以上
【交通手段】土気駅から徒歩20分
【入館料】1800円
【滞在時間】2時間
【混雑度】★★★(ちらほら)
【URL】