カメイ美術館
カメイ美術館は、仙台駅から徒歩10分程度の距離にある美術館。
仙台市を拠点とする総合商社カメイがオープンしたものであり、会社のもつ美術品・創業家のコレクションを飾っているところ。
しっかし、どう見てもオフィスビルなので「本当に美術館あるのか・・(震え)」と一瞬入館をためらったのだが、勇気を出して7Fまでエレベーターで上がると受付があります。
エレベーターから降りると、受付前に大きなトラが居るので、またビビります(2度目)
何はともあれ、入館成功。
(7F展示室。公式HPより)
展示室は7Fと6Fに分かれているのだが、最初の7Fは画像の通り“正統派な”美術展示室。
宮城県にゆかりのある画家から、誰でも名前を聞いたことがある海外の有名どころまで幅広く絵画を扱っている。
公式HPの画像だと室内照明が明るくなっているけれど、実際は照明がもう少し落とされていてムーディな感じであった。展示作品次第で変えているのかもしれない。
(杉村惇『杜都晩秋』)
宮城県ゆかり系の画家としては杉村淳。
塩竃市や仙台市に居住して長きにわたり風景画を製作しており、仙台市名誉市民にもなっている。
仙台は通称「杜の都」なので、この『杜都晩秋』は仙台の景色を描いたものか。
右奥にやたら巨大な塔が見えるが、これは仙台に立つ「トリプルタワー」の1つと思われる。ちゃんと仙台人アピールしてますね。
え、仙台ってこんなフランスの地方都市みたいな風景だったっけ?となったのは内緒。
(佐藤隆春 『朝のサンミッシェル大通り』)
仙台出身の画家である佐藤隆春の作品。
また随分とヨーロピアンな仙台ですねぇと思ったら、こちらは本当にフランスだった。
建物や木々の彩りが鮮やかで豊かながら、空の澄み渡る青・道路の少し濡れて光っているようなところ(前夜の雨?)が、朝の冷えてスッキリした空気を画面全体に行き渡らせている。
なにより、人が全然居ないところがイイネ(人混み嫌い)
画家のHPはこちらから
(モーリス・ド・ヴラマンク『雪道』)
海外勢の作品としては、モーリス・ド・ヴラマンク。
通称「野獣」。
原色をガンガンに利用した強烈な色彩と激しいタッチはフォービズム(野獣派)と呼ばれており、ヴラマンクもフォービズムに分類されてはいるが、それ以上にこの人は他人に従うことを嫌い、絵画はほとんど独学で覚えたので、それもあいまって「野獣」呼ばわりされているのかもしれない。
別に目つきとかは関係ないと思う。
(富山恵美子『水惑星』)
あと印象に残ったのは富山恵美子の鉛筆画。
展示されていたのは別の作品ですが、この作品が個人的に好きなので載せております。
鉛筆だから繊細に描けるという面もあるかもしれないが、左下の泡だか水滴や、立体感がありすぎて逆に恐い重厚な花びらなど、よくここまで鉛筆で迫力を表現できるなぁと感心。
パックンフラワーみたいに蠢いて襲ってきそうな花びらと異なり、中央に居る羊の大群はボケーっとした表情で意思も生命が感じられないところが対照的で、白黒の背景と相まってなんとも不気味な構図が出来上がっていて非常に良い。
(6F展示室。画像は公式HPより)
しかしこの美術館の本質は、絵画ではないのだ。
1フロア降りて6Fの展示室にあるのは、世界中の蝶の標本コレクション。
壁に沿ってケースがずらーっと並べられていてレコードショップ感すらしますが、これ全部に蝶の標本がぎっしり入っているわけです。
その数なんと約14,000頭。
蝶が嫌いな人間は間違いなく悶死するであろう。
たぶんこれら標本を一つでも盗むか壊そうとした瞬間に、美術館サイドは「そうかそうか、つまり君はそういうやつなんだな」と言ってくれるはず(エーミール的な意味で)
あまりにも大量にチョウチョが居ますので、気になった蝶だけ挙げますね。
まずは日本の国蝶であるオオムラサキ。
名前通り紫なのかと思ったら、メスは全然ちがって酷い色である。(オスは紫)
これだとオオムラサキだと分からず、ただの蛾だと間違えられて倒されるであろう。
ちなみに蝶と蛾は、厳密には区別しきれないらしい。
「蝶は昼行性・蛾は昼行性も夜行性もいる。ただし蝶の中にも夜行性がいる」というように、但し書きに該当する奴らが多すぎるのだ。
そもそも蛾に該当する連中は、蝶の20~30倍にあたるので、蝶は蛾の一種だと思った方がよい。
「蝶は許せるけど、蛾はダメ」勢は、もう抵抗は止めて蛾と和睦しよう!
それで助かったりはしないけど。
(画像は山口県立山口博物館のHPから http://db.yamahaku.pref.yamaguchi.lg.jp/script/detail.php?no=380)
オレンジの羽をもつアカメガネトリバネアゲハ。
19世紀に東南アジアで発見されたものだが、当時はオレンジの羽をもつ蝶がいると誰も思っていなかったらしく、発見者であるウォレスという人は日記で「鼓動は激しく打ちなり、血が頭に上って失神しそうだった」と振り返っている。
興奮しすぎだよ。もうちょっと落ち着いてクレメンス。
世界最大の蝶は、アレキサンドラトリバネアゲハのメス。
上のHPの写真がインパクトありすぎるが、羽を広げると28cmにも達し、人の胸を覆ってしまうレベルの大きさである。
最初の発見者は、これを鳥と間違えて銃で撃ち落としたそうな。
帰宅して、家の中にこんなん居たら間違いなく逃げ出すだろう、私が。
(スカシジャノメ。画像はwikiより アケボノスカシジャノメ - Wikipedia)
他にも羽が透明なスカシジャノメなど、多くの仲間が皆様をお待ちしております。
大量にあり過ぎて紹介しきれませんので、ここまで。
というか、気分悪くなってきた(げっそり)
蝶の羽7000枚を使って製作した曼荼羅図みたいなものもあった。
昆虫虐待な気もしますが、昆虫なのでシーシェパードも何も言わないでしょう。
(画像はwikiから)
創業家一族のコレクションはもう一つ、こけしが6Fエリアの半分を占めております。
江戸時代から温泉場の土産品として製作された、東北地方の特産品。
もとは子供の玩具としての扱いだったが、明治以降になってやってきた西欧の人形の方へ子供の目がいってしまい、その代わりにコレクター達が民芸品として注目をし始めて、こけし収集家を生むこととなった。
(鳴子のこけし。画像はwikiから こけし - Wikipedia)
てきとーに見てると全部同じに見えるのだが、地域ごとに違いはある様子。
スタンダードなのは鳴子温泉のもの。
全体のバランスや重心がしっかりしていて、見ていて安定感がある。
(作並のこけし。画像は 作並こけし | でんとうずかん より)
一方で作並のこけしは、鳴子に比べると体が細く作られている。
玩具であるから、子供が握りやすいことを重視して、このような形にされたんだと。
顔もシュッとしていて、こうして並べると鳴子のものとはかなり形式が違うことが分かる。
そんなほんわかしたこけしちゃん達を見て、チョウチョ標本で荒んだ心をお癒し下さいませ。
以上。
【交通手段】仙台駅から徒歩10分
【入館料】300円
【滞在時間】60分
【混雑度】★★(館内に2~3人)
【URL】カメイ美術館(旧カメイ記念展示館)