ビアトリクス・ポター資料館
ビアトリクス・ポター資料館に行きたいんですけどね、そこに行くには動物園の中を通らないといけないのですよ。
資料館の運営は大東文化大学なのだが、資料館を大学キャンパス内に置けなかったようで、隣接する「こども動物自然公園」の中に設置している。
だから資料館だけに行きたい人でも、動物園の入場券を買わなければならんのだ。
510円。
ちなみに動物園には1600匹もの動物が飼育されており、敷地も広くアスレチックもあって結構な規模を誇ります。
最寄り駅は高坂っていう埼玉でもだいぶ外れたところだし、そこから更にバス利用なのでだいぶアクセス悪いのだが、経営は大丈夫なんでしょうか。
『ダーウィンが来た』でいつのまにかレギュラーを取っているマヌルネコもいるよ。
しかし今日は資料館目当てなので、動物くんとは触れ合わないのだ(不要なストイック)
資料館はこちら。
建物の外観はポターが所有していたヒルトップ農場をモデルにしております。
(画像はwikiから。Beatrix Potter - Wikipedia )
こちらがその本家ヒルトップ農場。
思いっきり瓜二つである。よくここまで寄せましたね。
さて入館するのだが、ここでまた200円かかる。
すでに動物園の入場料510円払っているのだが、資料館目当てで来る人間は合計で710円払わなければいけないということだ。
うーんなんという労働者搾取、これはラッダイト運動ですわ(19世紀の世界史並感)。
動物園の客はまぁまぁ居て、この資料館周りの道も通行人は多いのだが、そのわりに入館者は殆どいなかった。
別途200円課金制のせいで、みんな尻込みしてるんじゃないっすかね(ひがみ)
また資料館入口のドアが閉められているので、「これ中に入っても良いの?」とみんな恐る恐る入館して行くのだ。
せめてドアは開けておいて、風通しの良い職場にした方が適切かと思います(提案)
館内は撮影禁止ですね、代わりに動物園内のウサギの写真を貼ります。
展示内容としては、ポターの経歴や作品説明など一般客向けの物の他、原画や書簡など研究者向けの貴重な資料が多数ある。
実は、児童文学者として世界で最も研究がされている人物であるらしい。
ポターが出てくるまでは子供向けの本が「文学」なんて思われない時代だったから、パイオニアとしてその存在が重要なのだろう。
(1901年に個人出版されたピーターラビット。画像はwikiより。The Tale of Peter Rabbit - Wikipedia)
もともとピーターラビットは、(ポターが教わっていた)家庭教師のお子さんに対して、ポターが手紙を送った際に合わせて書いてみたお話である。
友人からの評判が良かったので本にしようとしたが、女性蔑視の残る英国20世紀初頭であり、様々な出版社からお断りされたので自費出版した。
その後、フレデリック・ウォーン社という出版社が話に乗って出版したところ、意外にも大ブームになってしまう。
(日本で1954年から出回った紙芝居。藤下書房)
このときウォーン社は海外で著作権を申請し忘れたため、アメリカを中心に海賊版が出回り、似ても似つかない怪しいウサギが跋扈することとなる。
日本でもこんな紙芝居が出版されていますが、一体どこの中国産ウサギなのかな君は?
ポターのポの字もありませんが、戦後だし、極東の国の紙芝居なんぞイギリス人は誰も気にしないか。
(湖水地方。画像はwikiより。photo by David Iliff "Beatrix Potter" - Wikipedia)
ウォーン社の担当者と39歳にして婚約したポターだったが、翌月に婚約者が病死するエクストリーム不幸。
これを機に、生まれ故郷のロンドンを離れて、湖水地方に一人暮らしを始める。
湖水地方では鉄道・住宅などの開発行為が企画されていたが、「豊かな自然景観を守りたい」として開発に反対するナショナルトラスト運動がまさに発生したところ。
ポターは書籍の収入で湖水地方の土地を買いまくり、農地として残す活動をすることで、このナショナルトラストに参加。
社会活動をしているのでオープンな性格かと思いきや、実は極度の人見知りであり、「知らない人が自宅付近まで近づいてくるのが見えると、家の裏口から逃げだしていた」という、とても心配なエピソードが残っている。
ピーターラビットが革新的だったのは、動物を動物的・写実的に書いた点であるという。
それ以前では、動物が主人公であっても行動の仕方が人間的すぎて、動物というよりもはや人間であったらしい。
というわけでピーターラビットの世界では、動物たちはあくまで動物として、あまり美化されずに描かれる。
油断しているとあっさり捕獲されて「パイ食わねえか」になってしまいます。
館内では一室だけ撮影可能な部屋があり、それがここ。
物語の一場面を再現しているジオラマである。
農家のオッサンに追っかけられて殺されかけるこのシーンは第1話。
館内でアニメが放映されており、見ることができます。
かご。
手元のボタンを押すと、カゴが動いて、隠れていたウサギが登場。
これは第1話の続編にあたる『ベンジャミン・バニーのお話』の1コマで、大きな猫に追いかけられて死にそうになりながら、カゴの中に潜んでいます。
やたら命の危険にさらされるんだな、このシリーズ。
なんで知っているのかと言われると、館内にピーターラビット全巻が置いてあって、最初の数冊だけ読んだから。
1冊1~2分で読めるので、頑張れば30分で全23巻読破できるかも?
第1巻ではピーターの服が農家のオッサンにより没収されて、かかし代わりに畑で吊るし上げを食らっておりますが、資料館外の庭でそれが再現されています。
そんなんでピーターラビットの世界をいろいろ楽しめる資料館でしたが、やっぱり200円追加課金が嫌がられているのか、観覧者はあまり居ないのでした。
残念だなあ。
以上。
【交通手段】高坂駅からバス10分(10分に1本ペース)
【入館料】710円(動物園510円+資料館200円)
【混雑度】★★(館内に他に数名)
【滞在時間】60分
【URL】