宮川香山 眞葛ミュージアム
眞葛ミュージアムという陶磁器美術館が横浜駅近くにあると言うので、行ってみる。
きた東口を出て、ベイクォーターのショッピングモールを抜けてポートサイド方面へ徒歩10分。
この通りは薬局やショップが並んでいるから、THE美術館みたいな建物を探していくと高確率で素通りします(経験談)
入場料は800円とお高め。
以前は500円だったが、値上げされたらしい(涙)
宮川香山の経歴をまとめると、こんな感じだろうか。
1.幕末に近い頃、京都の高名な陶工の家に生まれた宮川香山は、早世した父や兄のあとを継いで陶磁器制作の道へ。「香山」というのは父が朝廷から得ていた称号であり、それを用いた。
2.めっちゃ有能で皇族にも作品を献納するレベルまでになった香山くんは、陶磁器の海外輸出を試み、開港直後の横浜に進出。京都の「真葛が原」に実家があったので、「眞葛窯」と名付ける。
3.当時流行りの薩摩焼は金を大量に消費するので費用が掛かるし金の海外流出にもなるから止め、「高浮彫(たかうきぼり)」を採用する。
(神奈川県立歴史博物館HPより)
それまでは陶器に下地として絵を描くのが普通であったが、外側に彫刻を付けてしまうのが高浮彫。
西洋家具では17世紀頃には既に見られた様式だが難易度は高く、それを陶磁器でも採用して、更にここまでド派手に仕上げるのは凄まじい技術が必要だそうな。
作品は1876年フィラデルフィア万博に出品され、宮川香山の「眞葛焼」は世界的に有名に。
なお明治政府はこの万博において、日本が欧米と同様の文明国であることをアピールするために全身全霊をかけており、眞葛焼きは大役を果たしたようである。
(『葡萄鼠細工花瓶』。アートアジェンダHPより)
器の外側に装飾を付けるということだが、装飾の方がむしろ本体なのでは無いかというくらいの量と存在感。
鳥や猫、ネズミなど動物の体をまるまる彫刻しているので、そりゃボリューム感ある。
人形劇のような作品すらあり、かわいらしい世界観は西欧人にも受け入れやすかったであろう。
ケモノ大好きだしな、彼ら。
(横浜美術館HPより)
ただ高浮彫は完成まで数年を要し、生産効率がひどく悪いので、次第に香山はそのド派手な作風を変え、中国の磁器を研究しつつ花鳥風月的な東洋風スタイルになっていく。
それに伴い陶器は減って、磁器が主体に。
(公式HPより)
晩年にも高浮彫つくってますけどね、東洋風に回帰したあとなので、初期のような派手なものではなく、シンプルさを感じさせる作風になっています。
蟹付花瓶は、陶器の内側の青色を水に見立てて、それにカニがのそのそ入り込んでいこうとする、静けさがありながらも動きがあり、さらにコミカルさも交じっている傑作。
いずれにしろ海外の好事家から大人気になってしまった香山の作品はガンガン輸出された。
国内には僅かにしか残らず、逆に戦後になって日本人が買い戻すことになる。
1916年に香山は死去するが、「宮川香山」という号は養子が2代目として引き継いだ。
だが3代目は1945年横浜大空襲で死亡してしまい、急遽跡を継いだ4代目は才能に恵まれなかったらしく、この4代目死去をもって宮川香山は廃業となる。
以上
【交通手段】横浜駅きた東口から徒歩10分
【入館料】800円
【滞在時間】30分
【混雑度】★★(他に2~3人)
【URL】