C級スポット探索日記

C級スポット探索日記

各地の資料館・博物館・珍スポを回り倒すのが趣味です。転勤族(神奈川→埼玉→長野)

黒姫童話館

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黒姫高原はこういう風景が一面に広がっているところなので、旅行で訪れたり別荘を建てる著名人がいたりするわけです。C.W.ニコルのおっさんが荒れた里山一帯を買い取って自然保護活動やって有名になったのもこのあたり。

丘の上に見えるのが童話館。黒姫にゆかりのある児童文学者や絵本作家を扱っています。入館料は600円。

www.town.shinano.lg.jp

普通は車で来ると思いますが、公共交通機関ガチ勢はしなの鉄道黒姫駅まで来て、バスで黒姫高原に向かうことになります。

バスは7月~9月のみ運行なので、それ以外の時期はタクシーか、片道6㎞の山道を歩くか、そもそも来ないかのいずれかになります。

タクシーだと2,500円程度ですね。黒姫駅前の観光案内所で初乗り料金が無料になるカードを配っているので利用してどうぞ。

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館内の要素は主に、松谷みよ子ミヒャエル・エンデに関する展示、近隣に伝わる民話の紙芝居アニメーション、あと夏休みだからかお話会イベント(図書館や公民館でやってる読み聞かせ)もやってましたね。

サイズは小さいですがカフェもあり、ルバーブジュースとか木いちごアイスとか、山村っぽさのあるおやつが売られています。

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松谷みよ子さんは『モモちゃんとアカネちゃん』シリーズが有名だそうです。

4歳のモモちゃんのお家に、人語を解するネコやらネズミやらニンジンやらが集まるほのぼのファンタジー。なおニンジンはモモちゃんに「嫌い」と言われたショックで川に入水します。

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安心安全の童話かと思いきや、3巻目でモモちゃんのパパとママが「おわかれ」してしまい、シングルマザーになりました。唐突に現実をぶっこんで来るから笑ってしまった。

そしてパパは6巻目で死んでしまうそうです。ママがパパに生命保険を掛けていたかは、定かではありません。

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松谷みよ子さんと言えば「いないいないばあ」の作者でもあります。この本の表紙が怖いと思うのは私だけでしょうか。瞳孔見開いて、汗を垂らしながら、口を開けて半笑いでハァハァとこちらを見ているんですよ。背景を黒にして出版していたら、松谷さん間違いなく長野県警に連行されていると思う(イラストは松谷さんではありません)

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館内には図書コーナーがあって、児童書や絵本を読めます。
私はモモちゃん読んだことなかったので、先ほど知った離婚シーンを見たくてしょうがなかったから、このコーナーを全力で探し回りました。汚い大人だなぁ。

1冊200ページくらいあるので、意外とボリュームあるんですね。ピーターラビットなんて1冊30秒で読み終わるのにね。

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次はミヒャエル・エンデ。ドイツの作家ですが『モモ』『ネバーエンディングストーリー』などが日本でも人気を博しています。ここ信濃町とは縁もゆかりも無いはずなのに、なぜか所持していた資料の大半を寄贈しました。

なんでや?という疑問に対して童話館HPは「それはそれは童話的なご縁がありまして・・」とメルヘンチックな書き出して説明文を掲載してるのですが、肝心な寄贈理由がどこにも書いてないので、結局わからんのです。HP担当者は作成途中でファンタジーの世界に行ってしまったのだろうか。

 

『モモ』はさっきのモモちゃんとは別人です。

平日も休日もあくせくしていて「時間が足りない!」とぼやいている大人たちを、小さい女の子の目線を通して揶揄していく社会風刺的ファンタジー。映画を1.5倍速で見るような方々の胸に突き刺さり、そのまま殺してしまう感じ。

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展示室にはエンデの半生説明のほか、遺品がおかれています。

愛煙家だが「比較的、健康にいいから」という理由でパイプを好んでいたそうです。「糖分0だから」と言ってハイボールをがぶ飲みする中年サラリーマンを思わせます。

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最後は館外にある、絵本作家いわさきちひろの山荘。

安曇野とか松本の方にいた人ですが、途中で黒姫に浮気して山荘を建てて、こちらで仕事をしていたそうです。それを移築してきました。

アトリエやリビングが公開されていますが、夏の森の中だから虫がやばい。私は1分で逃げてきました。

 

おしまい

 

【滞在時間】90分

【混雑度】★★★(周りに人がちらほら)

【URL】

douwakan.com

 

野尻湖ナウマンゾウ博物館

野尻湖は長野県北部、新潟県との県境近くの信濃町にある湖です。

標高600mの高原に位置するので、1920年代に外国人が避暑地として別荘開発したのが始まり。カヌーやヨットに遊覧船、あとナウマンゾウが楽しめます。

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最後に変なのが混じっていましたが、お使いのパソコンは正常です。
野尻湖ではナウマンゾウの化石がぼろぼろ見つかっていて、その調査成果を飾っているのがナウマンゾウ博物館です。
入館料は500円。


普通は車で来ると思いますが、そんなの知らんという人は黒姫駅からバスを使うことになります。
7月~9月は観光バスが黒姫駅野尻湖を運行しており、1乗車500円。他にホテルタングラムへのバスが4月~11月にあり、こちらは200円。駅前の観光協会ではタクシーの初乗料金割引券も貰えるので、バスと時間が合わなければこれを使おう(野尻湖まで割引適用で2,000円ちょっと)。

www.town.shinano.lg.jpなお信濃町は結構な降雪地帯なので、これ以外の季節だとステージがアイスクライマー仕様となり難易度が爆上げされるから死ぬ覚悟が必要である。まぁ博物館、冬季閉館ですけどね。

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さて入館すると、まずは象の系統図がありました。
そもそもナウマンゾウって何なんでしょうね。

ゾウはゾウ目(長鼻目とも言う)に属しますが、その中で幾つかの科に分かれているようです。

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初期の象と呼ばれるのは5600万年~2800万年前のアフリカで見つかったフォスファティリウムですが、どう見てもカバである。君の姿で「ゾウです(迫真)」と言っても、90歳のお婆さんですら騙されず、農協の通帳を持ってATMまでたどり着きすらしないだろう。

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もうちょい進化すると象っぽい姿になってきますが、厳しい生存競争を生き残るためか、強烈な武器を携えています。
ゴンフォテリウム科に属するアナンクスは牙が相手の顔に向かって伸びる自動目つぶし性能を備えており、友達いなさそうです。
ステゴドン科のステゴテトラペロドンは牙増量中で、草を食むというよりその辺のシマウマを突き刺してバーベキューにしそうである。

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ナウマンゾウが属するゾウ科は、我々のイメージする象って感じですね。
見た目の特徴として、頭頂部に出っ張りと平らな部分があります。人間でもこういう髪型の人がたまにいますね。

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ナウマンゾウの名の由来はドイツ人研究者エドモンド・ナウマンです。彼はナウマンゾウを見て「インドで見つかった象と同じ種類のものだ」と発表しましたが、全然別の種類であることがのちに分かりました。ナウマンの嘘つき!ケチ!河童!

それなのに、最初に研究した人だから・・ということで、彼の名を取ってナウマンゾウと名付けたそうです。おそらくナウマン氏は人格者だったので、日本側も厚遇したのでしょう。オリンピック直前の会見で「最も重要なのは中ごk・・ではなくて日本」と言い間違えたり、楽器ケースに入って出国したりしなかったのかもしれません。

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ようやく展示室にたどり着きました。等身大に再現した巨大ナウマンゾウがお出迎えです。
このナウマンゾウくんは鳴声も再現されていて、博物館HP掲載の電話番号に掛けると聞くことができるという、どこまで喜んでいいのか分からないサービスがあります。

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出土品は様々ありますが、多いのは歯ですね。
長生きなナウマンゾウは60歳以上まで生きるそうですが、生涯で歯は5回生え変わり、古いものはその辺に落とされます。
上あごと下あごに2本ずつしか生えないので、その分サイズが大きい。草をすり潰して食べるので、こういう形状をしています。

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こちらは牙。江戸時代の水道管みたいな太さである。中身は空洞。

 

ところでナウマンゾウ自体は日本全国で出土しているので珍しいわけではないようですが、野尻湖の特徴として、狩りの道具が一緒に発掘されていることがあります。つまり人がナウマンゾウを捕えていた狩場だったと。
ゾウの肉は当然たべるわけですが、展示によると血液まで食用として使っていた。沖縄には豚の血を使った炒め物料理があるそうですが、旧石器時代人だからもっと豪快に、血を口の中いっぱいに含んで高笑いするバンパイアごっことかやったのだろうか。

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狩りの様子を描いた絵ですが、迫力のシーンなのに脱力感いなめませんね。ゾウも驚いた様子で「ファー!?」って表情です。左端で一人おぼれています。

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旧石器時代野尻湖ピープルのお菓子だそうです。クルミです。
その近くに似たような形の物がありましたが、こっちはヘラジカの糞でした。
「現生」と書いてますが、たぶん現代のヘラジカの糞ってことです。生の糞という意味ではないですし、刺身にはできません。

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特筆ポイントその2として、一般人が発掘に参加できる点があります。普通は専門家集団が幸せな調査をして終了ですが、ここでは希望すれば誰でも発掘マンになれるのです。世界でも珍しい手法だそうです。

 

1962年から始まり、3年に1回ペースで開催され、2018年で第22回を迎えています。
希望者は野尻湖発掘調査団までお電話を。申込書を郵送するので、記入して返送してね。ネット申込とか想定すらしてなさそうですが、調査団はほとんど高齢者なので今どきの機械は分からないのじゃよ。

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調査は野尻湖の水位が下がって地底調査が可能になる春先に、数日間かけて行われます。1日のタイムスケジュールが載っています。
時代を感じさせる写真ですね。石原裕次郎みたいなグラサンで発掘現場に来るんじゃない。

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夜はその日の発掘成果をまとめる会が行われるほか、催し物もあったようです。写真を見る限り、コンパの定義が現代と違いそうですが。

と結構なボリュームで1Fの展示室は終了。

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まだ2F展示室があります。

ただ2Fはナウマンゾウ関係なくて、よくある縄文土器展示室でした。私は大コンパで疲れ果てたので、持ち時間は2分といたします。

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奥に水槽があって、片方は魚、もう片方にはカメが居ました。魚は野尻湖の固有種でしたが、カメは外来のアカミミガメで生態系ぶっ壊しマンだからここに軟禁されています。

ペットを捨てる無責任な飼主には「ナウマンゾウの新種を見つけるまで野尻湖の湖底掘り続けるの刑」に処しましょう。

 

おしまい

 

【滞在時間】90分

【混雑度】★★(ほかに数人)

【URL】野尻湖ナウマンゾウ博物館

 

ぶどうの国文化館

山梨=ぶどうって言うけれど、これで他県に生産量負けてたら面白いなと思ってググったら、ちゃんと日本トップだった。疑ってすみませんでした。

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(ワインも1位。https://www.pref.yamanashi.jp/toukei/nippon_ichi.html


このページ、山梨県が1位なもの片っ端から挙げてるんですが、「1日の平均食事時間が日本一」「人口あたりの寿司屋数が日本一」とジャンルが多い。戦いの場を広げすぎである。そのうち「息子に信玄と名付ける世帯数1位」「小山田信茂を絶対に許さない県第1位」も加わるかもしれない。

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なので「寿司の国文化館」でも良かったわけですが、県内ぶどう過激派の反発が予想されたため、ぶどうの国資料館を建てたようです。
入場無料。勝沼ぶどう郷駅から市民バス「図書館・文化館」停留所で降りると良いでしょう。1日10本も無いので時間がシビア。

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入国するとオッサンが寝ています。私はぶどうを見に来たのであってオッサンの寝顔に興味は無いんですが、ブドウの国にはオッサンが生っているのでしょうか。

これは行基ですね。空海と並んで全国どこでも居るので登場場所はセブンイレブンの店舗数より多い気もしますが、この人が甲州を訪れた時、夢にぶどうを持った薬師如来が現れてその夢の後でぶどうの木を発見したというナンマイダー

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その行基の背後の暗闇から飛び出ている不審なおじさん。雨宮さんです。12世紀の人物で、山中で変わった植物を見つけたので持って帰ってきたのがぶどうになりました、って話。
自分が見つけたはずのぶどうを行基の手柄にされたショックでダークサイドに落ちたのでしょうか。恨めしそうな表情。あと戦場カメラマンに似てますね。「ぶどうは、、、私が、、、食べました、、、」

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そんなんで勝沼では古くからぶどう栽培がおこなわれており、江戸時代の旅行記や紀行文でもその一面が見られます。左は1693年の勝沼の模様でブドウ棚。
右は十返舎一九による道中記なんですが、奥州出身の僧侶と一緒に旅するのは“鼻毛延高”という連歌師。小学生の思いつきみたいな名前つけるんじゃない。なお画中の人物はどちらも鼻毛は出てないのでどちらが鼻毛さんかは分かりません。

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甲州街道勝沼宿では名産品としてぶどうがよく売られたそうです。ぶどう果汁につけた漬物とか干しぶどう、ジャムなど加工食品も多くてバラエティに富んでいました。

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次のレンガっぽい部屋は時代が進んで明治以降、ワイン産業の発展や製造の仕方などが説明されています。
開港と共に外国人居留地ができたのでワインやビールの需要が生じ、それに実業家が着目。とくに甲州人はのちに「甲州財閥」と呼ばれる人々を輩出したように先見の明がある人が多く、ワイン醸造を日本で最初に行ったのも彼らでした。

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しかしこの人どの方向みて酒注いでるんですかね。絶対こぼれるだろ。手元を見ろ。

相手の人も「え、こいつどこ見てんの(困惑)」感あふれる表情をしている。洋酒の度数は高いから酩酊意識朦朧しているのだろうか。港ヨコハマ1880年頃の風景です。

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山梨県内各地でワイン醸造が始まりますが、西洋ぶどうがなかなか日本の土壌で育ってくれず、ひたすら苦労。明治10年に創設された大日本山梨葡萄酒会社は高野正誠・土屋龍徳の両名をフランス留学させてワイン製造全般を習得させます。それがこの人たちね。

2年後に帰国した2人を中心に醸造開始、これでボルドーシャンパーニュしてボジョレーヌーボーや!と思ったんですが製造や貯蔵過程で欠陥があり、たびたび変な味のワインを出してしまったので5年後には会社解散しました。変な味ってなんだ。コルクを開けたらワキガの香りでもしたのだろうか。

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ワインを定着させるために販促も種々おこなわれました。当時一番の娯楽は歌舞伎なので会場に宣伝広告貼るとか、著名な役者にワイン割引券くばってもらうとか。
勝沼の気合は凄まじいものがあり、特に日之出商店という醸造所では日常生活で他の飲み物すべてを廃し、常にワインを飲むようにした。社員全員アル中になって仕事どころでは無いのでは。その後、日之出商店の行方を知る者は無かった・・(完)

 

歴史の展示はそんなところでした。博物館特有の「そして現代へ・・」みたいなのが無いし、明治以後どう発展を遂げたのかサッパリなのですが、とにかく終わりです。あとは君の眼で確かめよう!(ボトルを開けながら)

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そんなことより甲州市内ではこれだけぶどうを作っているんだ。こいつをどう思う。

どう思う以前に種類ありすぎて読む気がしないのですが、パッと見ただけでもすごく変な名前です(小並)ルビー大久保とかルビーオクヤマとか。この分だと実と実の間がすごい離れてる「テリー伊藤」とか、ぶどうにミカンが付いてる「ルー大柴」とかもありそうですね。

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あとは勝沼地域の各ぶどう農園の形状とか土質のレポートもあったのですが業界人以外誰が見るんですかね。圧倒的知識量で素人見学客をぶちのめすのはやめてさしあげろ。

 

というわけでした。
ワイン知識を高められた、、かどうかは分かりませんが徒歩圏内にワイナリーあるのでその足で飲みに行ってどうぞ。
おしまい

 

【滞在時間】40分
【混雑度】★(だれもいない)

【参考文献】『日本ワイン誕生考: 知られざる明治期ワイン造りの全貌』仲田道弘
【URL】甲州市 | ぶどうの国文化館

 

立山博物館まんだら遊苑

富山県庁がお送りする北陸最大級のレジャースポット。それはみんな楽しい遊園地でもなく、新鮮な魚介をふるまう海鮮市場でもなく・・・
あ、ホタルイカを生食すると寄生虫にあたる可能性があるのだけれど、特効薬が見つかってないので、手術で皮膚や腹をかっさばいて虫を直接摘まみだす羽目になるらしいよ。みんな気をつけようね!

 

 

で、なんの話だっけ。あぁ、富山県には県営の珍スポット「まんだら遊苑」があるってことですね。
東京ドーム何十個分だか分らんがとにかく広大な山の中に、立山に伝わる信仰をモチーフにして天界や地界の様子をどか~んと再現。現世が微妙なアナタ、転生なんて考えなくても、ここでは極楽と地獄ダブルで楽しめますよ。

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そんな面白げな施設ですが、しかしアクセスが悪すぎる。
公共交通だと富山地鉄富山駅から1時間、有峰口という無人駅で下車。山へ向かって徒歩40分。もうすでに地獄なのでは。
タクシー会社も近隣には無いので、富山方面から相当お高い迎車料金が取られそうですね。

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まんだら遊苑ですが、富山県立の立山博物館の一施設という立ち位置。すぐ後ろに控えている立山連峰は古代から信仰の場であり独特の伝承が残されているので、それを研究する施設です。
なので遊苑の近くに博物館(展示館)や、立山信仰を映像で学べる「遙望館」、信仰に関連する遺構、あと何故かカモシカ飼育施設が並んでいます。全部見ると半日かかる。まず遙望館の上映時間が40分あるからね(遠い目)。

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残念ですが時間の都合で、まんだら遊苑のみ見学します。入場料は400円。県営施設なので安いですね。
最初は地界ゾーン、つまり地獄。ゴツゴツして威圧感のある建物の中に、それはあるそうです。

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え、なにこれ。暗い。暗い。怪しい。奥の方でごーごー言ってる。ちょっと普通に怖いんですが止めてもらって良いですか富山県さん。

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閻魔大王のいらっしゃる地底の灼熱地獄を表現しているそうな。ところどころ聞こえる不快音は炎で焼かれる鬼共の悲鳴。サイレントヒルの裏世界みたいだ。
とにかく怖いのでさっさと抜けたいです本当にありがとうございました。「400円で味わえる地獄ww」とか馬鹿にしててすみませんでした。

 

なんとか外に出られましたが、ここは地界ゾーンなのでまだまだ地獄が続きます。
次のエントリーは、、針山地獄だぁ!!

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・・あれ・・急に作風が変わってない?さっきまでの緊張感はどこへ行ったの?工事現場でこんな素材見た気がするよ。

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これは水泡鬼。鬼たちの怒りが泡となってブクブク足元まで浮かんでくるよ。まるでジャグジー風呂みたいだね(雰囲気台無し)
右の写真は頂点が鋭角な石を並べてますが・・なんだっけ。たぶん足つぼ地獄です。内臓が悪い人間を痛めつけて不摂生を思い知らせます。

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フタが手で開けられるようになっていて、中から地獄の匂いがしてくるそうです。だいたい薬草系の香りでしたが、同行者が「カメムシの臭いがする!」と騒いでました。カメムシ地獄。鬼どころか閻魔様も嫌がるだろうなぁ。

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地獄っぷりがトーンダウンして拍子抜けした人も多そうですが、ここで「高所恐怖症ぜったいに殺す地獄」が登場。崖の先端まで橋が突き出ており、床はグレーチングだから下がのぞける仕様(雪落としのためだと思う)。
先端までいくと「救済の鐘」があるんですが、コロナの影響で取り払われており、誰も救済してもらえませんでした(完)

 

地界ゾーンおしまい。けっこうありましたね。
でもゾーンは4つあるので、まだ1/4しか来てないわけです。まんだら遊苑単体でも広すぎるわ。
なので気になったところだけ紹介しますね。

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地界ゾーンの次は「陽の道」。立山連峰には2,000~3,000m級の高山があり、旧来は山岳信仰・仏教が入ると修験道霊場として栄えるわけですが、そうした修行者が通った立山登山の道を追体験するというテーマ。

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・・っていうか坂を歩くだけなんですけどね。ところどころ山中の滝や大木を見立てたオブジェはありますが。
やっぱり最初の閻魔地獄を作るので予算使い果たしたのでは無かろうか。完全なる原っぱと化しているエリアもありますよ。修験道、それは野原でのピクニックとバーベキューなり。

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一番上まで行くと立山登頂です、やったー。んでこれはまた針山地獄でしょうか。
高いところは天に近い。なのでアナタはこれから天界ゾーンに召されます。おめでとう。言い残すことは無いかな?

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天界ゾーンでは小部屋が7つありまして、現代アーティスト7名による天国をイメージした作品が展示されております。
たぶん皆さんの思う天国と相当ギャップがありますし、空海もイエスアッラーも同じことを考えるかもしれません。

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あと音楽ルームとか瞑想部屋とかありましたが疲れてきたのですっとばし、最後は「闇の道」を通って現実世界に戻ります。
この道、わりと冗談にならないレベルで暗いんですよね。足元ぜんぜん見えない。ところどころ円形の窓から射している光を目印に、やっとこさ進みます。

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この窓なんだろうと近寄ってみたら、なんか目玉っぽい。怖ッ!「お前が現実に戻っても我々は見張っているからな」という天からのメッセージでしょうか。主よ、見守るのはいいけどストーキングやめてください。

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せっかく立山登山して天界まで辿り着いたわけですが、天界も天界でろくなこと無さそうですね。現世を諦めて死後の世界に全振りしてる熱狂的宗教者は一度来た方が良いと思うよ。

 

ということでした。
おしまい。

 

【滞在時間】90分

【混雑度】★★★(ちらほら)

【URL】富山県[立山博物館]

 

扇沢総合案内センター

あの!
トロリーバスが!!
扇沢に帰ってくる!!!

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何の話か分からないって?
すまない、黒部ダム以外は帰ってもらえないか。
ここは黒部ダムの麓、扇沢だからです。

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立山町HPより 赤丸は筆者記入 http://kanko.town.tateyama.toyama.jp/spot/index.html

長野県大町市から黒部ダムを経由して富山県につながる立山黒部アルペンルート。沿線に、日本で唯一のトロリーバスが走行していることは、観光で訪れた方ならご存じなはず。というか乗ってるはず。

このトロリーバスのうち、扇沢黒部ダム区間は2018年をもって運行終了。電気バスに代わることになりました。
引退したバスの1台が、扇沢駅の隣にある総合案内センターで展示されているのです。

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(バスの車内にも入れます)

ちなみに運行終了~展示までの経緯は、どったんばったん大騒ぎだった。
当初保存を計画していた大町市だが維持コストが高くて断念、バスはみんな解体場おくり。しかし熱心なファンが工場側に処分保留を訴えて時間を稼ぐ一方、各地の博物館に引き取ってもらえないか交渉していたと。なんという鉄オタ・・ならぬバスオタ魂。

その頃、大町市の職員はトロリーなんてとっくに重機のエサになったと思っていたらしい。切替が早いっすね。

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(地味に人気なゆるキャラ おおまぴょん氏 おおまぴょんのプロフィール | 大町市公式サイト

そんな大町市もファンの熱意にほだされ、保存計画に再チャレンジ!・・でも金が無いのは変わらない。それきたクラウドファンディング
ひとまず180万円を目標に募集したところ、3日間で達成した。さすが知名度ある車両は違う。おおまぴょんを人身売買に出さなくて済みましたね。

細かい経緯は↓。

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車両は展示用に綺麗にされて、2020年11月からここ総合案内センターにて展示されています。2021年4月からはトロバス記念館として新装開店するそうです。

中は簡単な展示室になっていて、20分もあれば十分。バスの時間待ちでどうぞ。
トロリーバス紹介のほか、バス乗務員の制服や機材が置いてありました。

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トロリーバスは電気を動力とするバスです。頭にパンタグラフみたいな棒が付いてて、これを上空の架線に当てて電気を取る。電車と同じです。だから法的には電車扱いなんですね。「無軌条電車」と呼ばれます。
架線から離れてしまうと動けなくなります。なので万が一トロリーと戦うことになったらパンタグラフ部分をグーで殴るのが有効ですが自分も感電するので引き分けです。

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(開業当時のバス)
1964年開業以来、多くの観光客をダムに沈め運んできました。
普通のバスではなくトロリーバスにしている理由は、黒部ダムが自然豊かな中部山岳国立公園に位置しているからです。排ガスぷんぷんのバスで走るより、電動車のほうがクリーンでしょ。ただ当時はEVなんて無いので電気を使うには架線を張らなきゃダメでしたということ。

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(国内唯一となった室堂のトロリー。画像はトロリーバス - Wikipedia

そういう付帯設備が多いことと、トロリー自体が日本でここしかないから部品の調達コストが高いんでしょうね。今は電気自動車も普及しているし。
バス運行者の関西電力さんも「もう安価な電気バスで良くね」と気づいてしまったらしい。2018年の営業を持ってお役御免。
国内のトロリーバス路線は、黒部ダムをさらに登って行った先、大観峰~室堂間を残すのみとなりました。

 

ところでさっき書いたけれど、トロリーバスって法的には電車なのね。でも実態はどうみてもバスだから、バスと電車で2つの免許が必要。
バスは大型二種で良いのでその辺の教習所で(たぶん)取れる。問題は鉄道で、「無軌条電車運転免許」という。以前は大型二種さえ持っていれば、国交省に書面申請することで簡単に取得できた。

だから「免許クラスタ」、それを実際に使うかどうかに関係なく世の中のあらゆる免許を取りたくて仕方ない人々ってのがいるそうなんですが、この方々は(使う予定のない)大型二種免許を手に、国交省へ申請に行ってたそうです。役所の人も大変ねぇ。

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ゆとりーとライン。画像はゆとりーとライン - Wikipedia

しかし法令改正により現在では必ず技能研修を受けねばならなくなりました。

教習所は国交省が指定してるんですが、ネットで調べても全然でてこないのね。国交省告示に載っているらしいのだが見つからない。
この「無軌条電車運転免許」、国内で必要になるのはトロリーバスと、あと名古屋を走る“ゆとりーとライン”だけなんですよ。だからそれぞれ運行会社が自前で教習所やってると思われる。JRが運転手の教習所を社内で持っているように。


そう思って、ゆとりーとライン運行会社である名古屋ガイドウェイ(株)HPを検索したら、2017年安全報告書なる書物に「無軌条電車の運転免許試験やりました」って載っていた。なので免許クラスタ関西電力か名古屋ガイドウェイに就職することで、免許証と心の空欄を埋められますよ。やったね。

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黒部ダム建設のハイライトビデオも放映中(左)。まぁ現地でも見れますけどね。上映時間20分。
あと『黒部の太陽』の説明ですが、原作の小説ではなく2009年香取慎吾主演のフジテレビドラマ。その収録秘話が幾らか紹介されてたんですが、撮影セットはめちゃめちゃ気合入ってて、スタジオに本当にトンネル建てるレベルだったそうな。黒部ダム工事の最難関が扇沢トンネル掘ることだったのにそれを簡単にやってのけるという、史実に対する盛大な皮肉をかましてしまいました。作者の木本正次さん憤死不可避。

 

ということでした、おしまい。

 

【滞在時間】30分

【混雑度】★(誰も居ない)

【URL】なし