福来記念・山本資料館
超能力みたいなの扱ってる資料館があるというから来てみたのですよ。
高山市内とはいえ、高山駅から2駅の飛騨国府駅、さらにタクシーで10分。
山の中のけっこう偏狭なところ。
超能力を得るには人里離れた環境が必要だとエスパー伊東もマギー審司も言っていた、いや言っていなかったかもしれないが。
(福来友吉)
1910年代に千里眼が流行った。手を一切触れていないのに病を治すとか、透視だとか、無くしたヘソクリの場所をあてるとか。霊能力。
火付け役の一人が福来友吉 博士で、変態心理学を専門とし、東京帝大で教鞭をとっていた。
変態心理学は別に変態さんを研究するわけでは無くて、異常行動・特殊状況下における心理を対象としています。
(御船千鶴子)
その福来に紹介されたのが、熊本に住んでいた御船千鶴子。透視能力を持ち、病人の体を見透かして病巣を捉える診療をやっており、朝日新聞が報道した。
SPAとかフライデーじゃなくて、朝日新聞ですよ。まぁあんま説得力ないか。
福来はわざわざ熊本まで出張。文字を書いた紙を封筒にいれて御船に渡すと、御船は中を透視して、紙に書いてある文字を当てるのだ。超能力!
・・という眉唾な話をメインで展示しているわけです。
なにが問題かって、この資料館、「御船には透視能力があった!」って本当に信じてるのよね。
そこは普通「こういう反対意見もあるが~」って距離を置いた立場で説明すると思うのだけれど、御船さんサイドに近い立場なわけです。近いどころか接近しすぎて後ろからハグするレベル。変態心理学(実践編)
御船の透視が怪しいのは、「部屋で一人きりの状態じゃないと、能力が発揮できない」というもの。
それ実は封筒あけて中身みてるんじゃないの、と当たり前な批判を受ける。
福来は人前でも能力を発揮できるように御船を訓練しようとしたが、そうなるまえに御船が自殺した。
世間の「インチキ」だというバッシングに耐えられなかったとか、金銭問題のもつれだとも言われている。
あと「御船千鶴子」で検索するとサジェストに「小保方」って出てきた。
STAP細胞も超能力の賜物だったんでしょうね。
(長尾郁子)
2人目の能力者が香川の長尾郁子。
精神統一すれば、何も書いていない板に文字を浮かび上がらす「念写」という技ができるらしい。
これまた福来博士は香川に飛んで実験し、その念写能力を目の当たりにし、長尾との研究に着手する。
しかし問題なのは、長尾は「実験は彼女が指定した部屋でのみ行われ、更に実験直前に一人で別の部屋へ行って口をゆすぐ」。そうしないと精神統一が出来ないんだとさ。
資料館サイドはこれに対し「念写は人類史上最大級の発見!」とパネルにでかでかと赤文字で書いていた。
ポジティブだね、君。
当然のように他の学者からは詐欺呼ばわりされ、挽回する間もなく、長尾は病死した。
ただ資料館の展示だと「批判を受けて悶死した」と書いてあった。
悶死って。そんな人類は、諸葛孔明に罵倒されまくって死んだ周瑜以来じゃないですかね。
(高橋貞子)
学会からコケにされまくって名声もだいぶ落ちている福来だが、念写力に定評があるとして高橋貞子をスカウトした。あんたも懲りないねえ。
さて実験。福来の持ってきた乾板に念写するよう命じたところ、念写されず、なぜか押し入れにしまってあった別の乾板に文字が映し出されていた。
こりゃもうダメだ。「あらかじめ押し入れに仕込んでおいたのだろう」と言われておしまい。
再度の実験では立会人のもと、ちゃんと念写できたそうだが、これもトリックでどうにか出来てしまうものだと言われている。
福来はこれまでの成果を『透視と念写』てな本にまとめて出版したが、信じる者もいませんわな。
学者連中から批判の嵐、東京帝大からは休職命令がだされて、そのまま退職。
(三田光一)
学会に居られなくなっても細々と実験を続ける福来さん。
「月の裏側を念写した」という三田光一とタッグを組む。
(「月裏念写の 月裏衛星写真との一致について」より 福来心理学研究所 http://www1.odn.ne.jp/fukurai-psycho/text/tukip_doc.pdf)
三田が念写したのが左。後世になってNASAが発表した、月の裏側の画像が右。
資料館を運営する福来心理学研究所は双方の画像を比較し、「クレーター等の位置が一致する」として、三田の念写は本物だったと結論付けている。
ああ、そうですか。
そもそも2つの画像が全然似てない気がするのは、私に超能力が足りないからでしょうか。
そんなこんだで世間から見放されてしまった福来博士。
学会追放から40年弱、82歳で亡くなったわけだが死の前夜に突如大声を張り上げ、「福来友吉2世 生まる」と叫んだらしい。転生ってダライ・ラマかよ。生まれ変わった福来、それはアナタのすぐ傍にいるかもしれません・・(声:稲川淳二)
(資料館HPより。山本健造 http://fukurai.net/yama/)
もうお腹いっぱいなのだが、福来ともう一人扱われている人物が、山本健造。
中学生の時から透視ができるようになり、15歳で念力を用いて病人を治すなどイエス様みたいな所業が為せたが、福来博士の『透視と念写』を読んで、自分の能力がまさに透視であると考え、福来ファンになった。
バッシングされまくった福来の記念館がこうして残っているのは、この人の尽力が要因の一つ。
「六次元弁証法」という心理療法を発明して診療活動していたらしい。
理論の詳しい内容は知らんが、「精神統一すれば体は金剛体となり、菌やウイルスにも勝てて、あと記憶力も増す」のだそうな。
南方戦線に行く前の帝国陸軍に教えてあげればよかったんじゃない。
(『日本のルーツ 飛騨』福来出版)
山本は「ヤマト王権の起源は飛騨にある」論を放っている。
飛騨に住む古老から聞いた伝承をもとに、この考えに行きついたらしい。
アマテラスも神武天皇もアナタも私もIKKOも、祖先のルーツはみんな飛騨なのです。
よかったね、飛騨。君は一人じゃない。
資料館のすぐ目の前に神社があるのだけれど、山本が設立した飛騨王朝の神宮らしい。
信徒を交えてお祭りをするそうです。
すみませんが宗教の勧誘はNGで。
山本いわく、飛騨の語源は「日抱(ひだき)」の儀式から来ているのだそうな。
池を真ん中にして皆で囲うように座り、池に映った太陽に感謝し、先祖崇拝もやる。
太陽の国。SUNRISE飛騨。
ところで飛騨の語源は『続日本紀』によれば「斐太(ひだ)という神馬を文武天皇に奉納した」こと。
土地の古老もとい爺ちゃんの話と、続日本紀。果たしてどちらに軍配が上がるのでしょうか。ご期待ください!
(以前の福来記念館)
ちなみに福来の資料館、以前は高山駅ちかく、古い街並みで賑わう観光地のあたりにあったのだけれど、閉館されている。
公式HPでも特に閉鎖の話は書かれていないので、まぁまぁ混乱のもと。
現在の位置より、あちらの方がよほど集客的には良いと思うのだが、居られない事情でもあったんですかね(すっとぼけ)
以上
【交通手段】飛騨国府駅から3.5km(登り)。タクシー1500円程度。
【入館料】400円
【滞在時間】60分
【混雑度】★★(他に2~3人)
【URL】