北斎館
小布施の名物と言えば、栗と葛飾北斎です。
葛飾北斎は晩年、小布施在住の友人 髙井鴻山を訪ねにやってきて、そのままこの土地が気に入って長期滞在し、作品も残しております。
当時は天保の改革(1830-1843)が行われており、財政再建が目的なのになぜか芝居や寄席などの娯楽まで禁止されて都市は息苦しい状態だったので、それを嫌がって北斎は田舎に逃避行というところ。
北斎が小布施に残していった芸術品を展示するために1976年に開館されたのが、北斎館。
建物の手前に銅像が立っており、説明も書いていないので殆どの客がスルーしている気がするが、この人が北斎館建設を決めた当時の小布施の市村郁夫 町長。
栗菓子の小布施庵の16代目当主でもあり、北斎を招いた髙井鴻山の子孫にもあたる。
(入館したら通路を通って展示室へ)
そんな北斎館の入場料は、なんと1000円!!!!
周辺施設はせいぜい300円程度のなか、驚きのハイプライスである。
以前は500円だったのだが、リニューアルしたのでその費用に充てるためか、1000円に値上げされたとのこと。
倍プッシュだ。
なお北斎館・小布施ミュージアム・髙井鴻山記念館との3館共通券が1300円で売っております。
【普通に券を購入する場合】
北斎館 1000円
おぶせ 500円
髙井 300円
計 1800円
なので3館回るときは間違いなく共通券の方がお得である。
しかし半分以上が北斎館の価格か(嘆息)。
館内は撮影可能ゾーンと不可ゾーンがあり、北斎の作品そのものを飾っている部屋では撮影ダメのようです。
こちらの部屋では北斎漫画の複製を展示していたので、カメラOKだった。
北斎漫画とは、絵の描き方のイロハを北斎が纏めた、手習い本である。
なので現代のcartoonとは異なります。
北斎が43歳の時に、逗留先の名古屋で半年かけて描いた300くらいの下絵を冊子にして出版したもの。
手習い本は他の絵師もやっているので珍しいものではないのだが、北斎はその後も続編を製作して全15編という長編シリーズになっている。
(鳥居の描き方)
国内で流行したことはもちろん、海外へも輸出されると、かのゴーギャンやゴッホらが大喜びで手に取ったとか。
19世紀西欧を席巻したジャポニズムの目玉である。
(植物の描き方。どの色を使うべきか、絵の横に注釈まで入れてある)
「絵を習いに来たがるやつが多すぎて面倒だったから、手習い本を出せば皆そっちに夢中になるだろう」と北斎が言ったか言わないか分らんが、北斎漫画の出版動機としてそういうことが挙げられている。
一方で、北斎が後進の育成のために手習い本に注力した、という説もある。
前者は「北斎変人説」、後者は「北斎常人説」といえるだろう(適当)
北斎漫画の内容は多岐にわたっていて、7編目くらいまでは写実的な、まさに手習い本という要素なのだが。
8編目以降になると、いつもの変人っぷりが抑えきれなくなったのか、一風変わった絵ばかり描き始め、もはや手習い本という名の鑑賞本になってしまったらしい。
この絵は、「太った人たち」という題になっている。
「痩せた人たち」も描いています。
(途中の休憩ルーム)
企画展の次は常設展の部屋が3つあるのだが、こちらは撮影禁止。
(『鳳凰図屏風』)
常設展示室のうち2部屋は、北斎の肉筆画を扱っている。
北斎と言えば版画が有名だが、小布施に来た頃の晩期は肉筆画や絵本が中心であった。
(『塩鮭と鼠』)
版画の方では写実的で繊細なスタイルの歌川広重が庶民に受けており、やけにエネルギッシュで緊張感のある北斎の絵は流行から逸れていたため、版画を止めたという説がある。
まぁそのとき既に、御年70代後半なわけですが。
これは絶倫ですわ(決めつけ)。
(『諸国滝廻り 下野黒髪山きりふりの滝』)
北斎と言えば、『富嶽三十六景』の通り、名所を書いた画が有名である。
名所画はもともと大して人気のないジャンルだったのだが、北斎がこれで大ヒットをもたらしたので、名所画も一気に人気ジャンルへ駆けあがった。
(いつもの)
ただ“名所”画と言いつつ、北斎の名所画は別に名所を扱ってなかったりする。
『富嶽三十六景』でも、富士山が良く見える名所を扱ってはいるのだが、そんな評判全くない土地も題材にしている。
「一瞬の偶然で目に映った富士の姿を捉える」という趣向ではないか、とのこと。
確かに、こんな荒波だらけの場所が富士の名所なわけないわな(納得)
(『諸国名橋奇覧 足利行道山くものかけはし』)
他にも諸国の橋や滝を題材にしているシリーズを描いているが、こちらでも登場するのは別に有名でも何でもない土地である。
マイナースポットを取り上げていく作戦。
ということは、非メジャースポットを回っている当ブログと、北斎の趣旨は同じということであろう。
いやー北斎と肩を並べるとは、まいっちゃうねぇ。
北斎が描いた天井絵のある東町祭屋台、上町祭屋台を展示しています。現在、上町祭屋台の天井絵「男浪」「女浪」図は大英博物館に出展中ですが、祭屋台も見どころたっぷりですよ~!
— 北斎館 (@hokusai_kan) 2017年8月8日
当館HPに解説がありますので、そちらもご覧ください(^▽^)/https://t.co/6xIrG9pQK7 pic.twitter.com/LqBEZuaHlP
最後に屋台がある展示室。
屋台は祭りで担ぐアレで、小布施にある7つの町でそれぞれ作っていた。
そのうち髙井鴻山が製作に携わった上町と東町については、北斎が屋台の天井に絵を描いてくれたのである。
(『男浪図』)
上町の屋台には1対の波の絵が描かれた。
下絵は北斎が担当し、彩色を髙井鴻山が行ったそうである。
(『女浪図』)
しかしこれ、何をもって男浪と女浪を定義してるんでしょうね。
東町の方は、龍と鳳凰。
しかし他の町は、庶民たちが費用を出し合って屋台を作製してたりするのに、上町と東町は髙井鴻山の財力で一発である。
草サッカーのリーグに、アラブの富豪が参戦してきた感。
この2つの屋台は天井以外にも様々な装飾が施されており、圧巻な出来栄えとなっている。
これを見るためなら500円払っても仕方ないかな、という感じ。
でも千円はちょっとね(直球)
以上。
【交通手段】小布施駅から徒歩15分
【入館料】1000円
【滞在時間】45分
【混雑度】★★★★(すぐ横に人)
【URL】