C級スポット探索日記

C級スポット探索日記

各地の資料館・博物館・珍スポを回り倒すのが趣味です。転勤族(神奈川→埼玉→長野)

河鍋暁斎記念美術館

 

ここは、蕨にある河鍋暁斎記念美術館

江戸時代末期~明治時代初期にかけて活動した日本画家、河鍋暁斎(かわなべ きょうさい 1831-1889)を記念する美術館である。

 

河鍋暁斎さんのお写真。Wikipediaより)

 

作品は国内外にて高い評価を得ており、特に明治時代にやってきたお抱え外人には彼のファンになったものも多い。

大英博物館には多くの絵画が所蔵されており、ジョサイア・コンドルという建築士はドはまりしすぎて暁斎に弟子入りし、「暁英」という号まで名乗っている。

 

画力が高すぎるため、狩野派で学んでいた時に師匠から「画鬼」と呼ばれており、自らも好んでこれを名乗っている。

たしかに、鬼っぽい顔してるね。

どちらかというとドラキュラかな?

 

 

河鍋暁斎は古河生まれで、2歳の時に江戸に来て以来、ずっと江戸。

だから蕨とは何の関係も無いのだが、戦時中に子孫の方々がこちらへ疎開してきて、そのまま住んでいるので、美術館もここに建てましたとさ。

 

 

 

しかし角度を変えると、どうみても団地である。

最初わからずに通り過ぎてしまった。

 

(第1展示室。公式HPより)

 

展示室は3つあり、まず第1展示室。

3m四方くらいの小部屋で、暁斎の描いた掛け軸が掛けられており、ショーケースには小さめの絵や本が飾られている。

もともと美術館として建てられたわけじゃないから、どちらかというと民家の小部屋っぽさを感じる部屋である。

 

 

美術館のtwitter より。暁斎による戯画)

 

このときの第1展示室では、子供用に描かれた戯画の企画展。

お祭りの様子か遊びの様子か分からないが、子供たちがどんちゃん楽しそうに騒いでいるシーンが多く、「あれ、画鬼じゃなかったの?」と拍子抜けするくらいノホホンとしている。

 

この美術館では、河鍋家に伝わる暁斎の下絵などがメインの所蔵物。

逆に完成型の絵はあまり無い。

完成した絵画は買い主が持っていくから手元に残らないという現実的な話であった。

 

美術館のtwitter より)

 

「画鬼」という称号を聞いて、荒々しい筆致を期待していた人には、ずっこけかもしれませんね。

子供を描いた戯画で鬼みたいなの出てこられても困るけれど。

 

ただ服の紋様とか髪の毛はめちゃめちゃ繊細に描かれており、顔にはいかんともしがたいような表情が浮かべられていて、その表現力の一端が思い知れる。

 

(『処刑場跡描絵羽織京都国立博物館HPより ※リンク切れ

 

暁斎は絵画だけでなく絵馬や双六に羽織と、頼まれれば色んなものに描いており、第二展示室ではそれらを見ることが出来ます。

しかし、特にこの羽織・・

 

 

・・とんでもなくグロテスクな場面が描かれていますが。

誰だよ、こんなの注文したの。

これを着て外出したら間違いなくお巡りさんに取り囲まれて「署まで」となるであろう。

 

なおこの羽織は京都府立総合資料館の所蔵であり、この美術館には展示されていません。残念。

 

(『名鏡倭魂 新板』) 

 

第3展示室では、暁斎の完成品を見ることができた。 ・・のだが、美術館が持っているのは下絵がメインなので、他の美術館が所蔵しているものの写真が展示されております。

 

子供用戯画や双六など、のほほんとした作風が多かったのだが、この第3展示室で完成形を見て、あまりのテンションの違いにビビる。

突然、鬼気迫るほどの勢いと迫力に満ちた作品の数々。

 

(『新板大黒天福引之図』) 

 

「画鬼」と呼ばれた暁斎だが、その名の通り絵画に対する熱意は強い・・どころか常軌を逸している。

 

【主要なエピソード】

・8歳の時、ヒトの生首が川を流れていたので、それを拾ってデッサンした。

 ・15歳の時、近所で大火事が発生したが、現場まで行ってそれをひたすらスケッチした。親父の職業が火消役だから、あとでめっちゃ怒られた。

・29歳で妻を亡くすが、その死体をスケッチした。

 

 

 (『幽霊図』)

 

あくまでエピソードなので話の真偽は分からないが、そもそもそんな噂が立つ時点で、一体どういう振る舞いをしてたんだアンタは、という感じである。

死体をスケッチしただけあって、幽霊とか異界のものを描くのはお得意。

 

明治になり、39歳の時には書画会で描いた即興画が「不遜だ」として官憲にしょっぴかれて投獄された。

詳細は不明だそうなのだが、「明治維新になって東京に入り込んできた薩長の連中が江戸式の風流を解さないので、暁斎が連中を馬鹿にしまくってヘイトを買った」という説がある。

なんだか納得できる。

 

 (『鯉魚遊泳図』)

 

「何だこの絵は」と言いたくなるぶっ飛んだ作品が多いですが、こういう落ち着いた伝統的日本画も描けます。

だが魚の動きの躍動感や尾ひれの揺れの優雅さ、水しぶきの激しさが存分に感じられ、静的な日本画とは一線を画していることが分かるだろう。

 

という感じで、暁斎のいろいろについて知れる美術館でした。

 

 ※参考文献

『もっと知りたい河鍋暁斎 生涯と作品』狩野博幸 著 東京美術 出版

 

 

以上

 

【交通手段】蕨駅西川口駅戸田公園駅からバス

【入館料】500円

【滞在時間】40分

【混雑度】★★(他に2~3人)

【URL】

kyosai-museum.jp